【エディージャパン検証】2024年最後のテストマッチで露呈した"成熟度"の低さ イングランド戦は点差以上の内容の差が
ラグビー日本代表(以下ジャパン)は、11月24日にテストマッチーオータムシリーズ最終戦をイングランド代表と行い、14-59の大差で敗れた。イングランドに対しては6月の対戦に続き本年の対戦は2連敗。通算13回対戦して、ジャパンはいまだに勝利できていない。イングランドはサマーシリーズから続いていたテストマッチの連敗を5で止めた。 ジャパンの本年最後のテストマッチは、チームとしての成熟度の低さ、不慣れなポジションでの選手起用、反則によるワーナー・ディアンズの出場停止などのネガティブ要素が重なり、戦前から苦戦は予想されてはいたものの、予想以上の大敗となってしまった。6月の対戦時のスコアは17-52だったが、その時のスコア差を詰めるどころか、逆に広げられてしまう結果となったこの一戦は、点数差以上に内容で差をつけられてしまった印象を残した。 まず、第2次エディー体制発足以来の特色だった、立ち上がりの良さがこの試合では見事に潰された。オータムシリーズ初戦のニュージーランド戦まではジャパンが先制して、前半の20分くらいまでは試合を優位に進めるという展開がみられたのだが、2戦目のフランス戦で序盤から圧倒されてしまってからは、以前の悪癖を思い出してしまったようだ。 この試合も、開始5分でつかんだPGをプレースキッカーを務めたSH齋藤直人が外すと、あとは防戦一方の流れとなってしまい、前半32分までに4連続トライを奪われ、0-28と試合の趨勢が決まってしまった。トライを奪われる流れも、サマーシリーズのVTRを見せられているかのような展開。力のあるランナーに次々とボールを持って突っ込んでこられて、ディフェンスの枚数を減らされ、最後は大外に待っているプレーヤーがインゴールにボールを持ち込むというパターンを粛々と遂行されてしまった。 サマーシリーズから安定していたスクラムも、この試合では3つのコラプシングを取られたことを始めとして常に劣勢を強いられた。サマーシリーズで手を焼いたスクラムに悔しい思いをしていたであろうイングランドFWが、見事にリベンジを果たしたというところだろうか。ジャパンの数少ないストロングポイントを真っ向から叩き折り、反撃の起点を奪い、チームの士気を上げさせなかった。 スクラム以上の惨状を呈したのがラインアウト。2本のスチールと3本のスローミスで、自らチャンスを手放してしまっていた。レギュラーHOの原田衛が試合直前で欠場となり、急遽先発したのがこの試合が初キャップの李承爀。招集されたのがイングランド戦の直前という状態で、ジャパンというチームに十分にフィットできていなかったこともあるが、ラインアウトで確実にボールを保持して、そこを起点に攻めようとしていたチームにとっては大きなマイナスだった。 交代出場した松岡賢太もまた、後半早々の相手ゴール前でのマイボールラインアウトでスチールを許す手痛いミスがあった。前述したスクラムでの劣勢も、この日出場したHO2人の経験の浅さと無関係ではないだろう。SO、FBに続き、レギュラー選手と控え選手の間に大きな差があることを露呈したHOの育成も今後の大きな課題の一つとなった。 ジャパンの持ち味がことごとく殺されていたこの試合の中での数少ない光明は、2本のトライだろう。1本目のトライは、素早い球回しを継続させ、相手ディフェンスラインにできたギャップを、ジャパンの切り札であるディラン・ライリーが鋭く突いて大幅にゲインし、齋藤がフォローして挙げたもの。2本目はやや相手の注意力が散漫となった密集近辺でFWが細かくオフロードパスを繋いでFL姫野和樹がインゴールに捩じ込んだ。どちらも、相手の隙を上手くついたトライで、「超速ラグビー」の理想型でもあった。 こうした隙を意図して数多く作り出し、そこを突いて得点を重ねることが超速ラグビーの理想的な試合運びなのだろう。とはいえ、この理想像を体現しているとはお世辞にも言えないのが今のチーム状態だ。ジャパンの次のテストマッチは来夏まで一旦お休みとなるが、今年のテストマッチの結果を受け、その期間にどれだけ理想型に近づけるのか。選手選考と併せ、エディーHCの手綱さばきに注目したい。 [文:江良与一]