韓国拉致被害者家族、横田めぐみさんの写真も入れた宣伝ビラ10万枚、平壌への散布強行へ
非武装地帯に接する住民の苦しみ
今回、拉致被害者家族の団体が宣伝ビラの散布を行うと発表した坡州市は韓国北西部に位置し、非武装地帯を隔てて北朝鮮と向き合っている。そのため、南北関係の緊張が高まると住民たちはその影響を受けざるを得ない。実際、北朝鮮からのゴミ風船が飛んでくるほか、9月下旬からは北朝鮮が拡声器で動物の鳴き声や金属を引っ掻くような騒音を爆音で流しだし、生活に大きな支障を及ぼしているという。 住民の高齢者は「睡眠薬と鎮静剤を飲んでも無駄だ。耳栓をすると耳がただれて炎症が起きた。政府関係者はここに来て一晩だけでも過ごしてみるべきだ。とても苦しい。どうか助けてほしい」と涙を流した。また別の住民は「以前の拡声器放送は人の声だったが、今度のは騒音で拷問し、精神病になりかねないほどだ」と訴えた。 さらに、北朝鮮からの軍事行動に備えるため韓国軍の警備も強化されたため、大通りには装甲車が配置され、農作業をしていても兵士から追い出されることもあるという。また、平時であれば政府の許可を得た観光客のツアーも行われていたが、それらも突然中止になってしまい、宿泊業者も含めて、地域経済に影を与えつつある。 <トラクターでビラ散布を阻止!> そうしたなかでの拉致被害者家族による北朝鮮向けのビラ配布発表には、市民だけではなく地元の自治体も猛反発している。 坡州の市民団体、政党、住民などは「北朝鮮へのビラ散布をきっかけに南北対決が深まり、ゴミ風船や拡声器放送につながって、今では軍事的に対峙する状況にまでいたった。北朝鮮へのビラ散布を止めなければならない」と声明を発表。 とりわけ、非武装地帯に接して民間人出入が統制された区域にある3つの村の住民たちは、ビラ散布を実力阻止することを決定した。 「住民たちはトラクター20台余りを運転し、対北朝鮮ビラ散布行為を阻止することにした」(イ・ワンベ統一村村長)。 地元自治体の京畿道と坡州市もビラ散布を阻止するために動き出した。道は坡州市、金浦市、漣川郡の3市·郡を「危険区域」に設定し、対北朝鮮ビラ散布を禁止する措置を打ち出した。ビラ散布目的で関係者が危険区域に出入りしたり、その他の禁止命令または制限命令に違反した場合、1年以下の懲役または1000万ウォン以下の罰金刑に処するという。 朝鮮戦争から70年余が過ぎた今、分断の影響は南北だけに留まらず、韓国国内にも大きな亀裂を作っているようだ。