今や〝ポスト森保〟の最有力!? FC町田ゼルビアの黒田 剛監督はここがスゴい!
■対戦相手の監督の発言までチェック 近年、日本サッカー界では、ショートパスを駆使し、ボール保持を重視するサッカーだけを正義と見なすような風潮があった。 そんな中、町田はボール保持にこだわらず、状況によってはロングボールの多用も厭わず、攻守共に相手が嫌がることを繰り返す。そうして愚直に勝利を追い求める黒田監督のスタイルは青森山田高校時代から、どこかヒール的に見られる傾向があった。 だが、その黒田監督が自らの哲学を貫き、今や日本最高峰のJ1で首位争いをしているのだから面白い。 「ボール保持率のことがよく話題になりますが、そのデータで下から数えたほうが早いチームがリーグ首位を走っているなんて、今までなかったことですよね。 そういう意味では、そうした数字(に基づく評価の優劣)にいかに根拠がなかったかということをウチが証明しているのかもしれませんし、今後もブレずに町田らしいサッカーを継続していきたい」(黒田監督) 練習ではFKやロングスローにも多くの時間を割き、退場者を出した際のシミュレーションも行なっている。 ロングスローについては、これまでもその是非がたびたび議論の対象になっているが、実際に町田はロングスローから多くのチャンスを演出し、得点を奪っている。 右サイドのロングスローに加え、セットプレーのキッカーも担う前出の鈴木は、黒田監督からボールの質や蹴る(投げる)位置についても細かい要求があると証言する。 「例えばCKで、狙いがニアサイドならだいたい手前のポスト付近を狙って蹴って、そこに味方選手が走り込んでくるというのが普通ですが、黒田監督の場合はピンポイントで『ここ(に蹴れ)』と指定し、さらにボールスピードについての要求もある。過去、他チームでここまで求められることはなかったです」 サッカーは相手があってのもの。黒田監督は試合前に対戦相手の映像やデータを分析するだけでなく、元教師らしく相手指揮官の性格や人間性まで想像しながら、打ってくるだろう手を読むという。 「(相手監督の)コメントやインタビューなども見ますよ。表情や話している内容にだいたい性格が出るものですから。それらを踏まえ、相手の出方を想像し、それに合わせて対策する中で相手を上回ることは常に考えています」 こだわりは守備とセットプレーだけにとどまらない。 例えば14節のC大阪戦では先制しながら84分にPKで1-1の同点に追いつかれると、直後に残っていた交代カード3枚を一気に投入。後半アディショナルタイム93分に勝ち越しに成功した。 この決勝ゴールは味方のゴールキックにいち早く反応したDF林 幸多郎が左サイドで高い位置まで抜け出したところから生まれた。試合終盤になっても選手が集中力を切らさず、素早い攻守の切り替えを行なった成果とも言える。 「攻守の切り替えについては、いつも話しているところ。陸上競技の100mの選手なら1秒で約10mの差をつけられますけど、サッカーでも1秒切り替えが早ければ(相手に)3、4mの差はつけられる。その差が数的有利につながるわけで、絶対に怠らないように選手には徹底して言っています。 交代カードをどう切るかは状況によりますが、例えば試合終盤にフレッシュでスピードのある選手が出てきたら相手は絶対に嫌でしょうからね」(黒田監督) 今後の不安要素を挙げるなら、黒田監督はいまだ町田では連敗がないだけに、負けが重なってきたときにもこれまでと同等の求心力を保てるかだろう。