5人のパパ&幼稚園の先生・つるの剛士「保育と子育ての一番の違いは”ねらい”があること」
学びの大変さと楽しさを味わいつくした「学生生活」
特に大変だったのが「教育実習」。自分の受け持ったクラスの子どもたちの名前と顔を一致させ、各々の性格を頭に入れながら、幼稚園の一日の流れも把握。動き回る子どもたちと対峙しながら覚えることが山ほどあって、保育時間終了後は日誌を書かなくてはいけないのに、振り返ることすらままならず、家に持ち帰ってひたすら書いて仮眠。朝になり登園……という毎日が月曜日から金曜日まで続き、やっと週末を迎える生活でした。おかげで「花金」のすばらしさを生まれて初めて知ることができましたけどね(笑)。 でも、社会経験と20年近い子育てを経ての勉強は、若い学生さんたちより優位に感じることも少なくありませんでした。子どもの成長行動などを学ぶと「うちの子のあの行動はこういうことだったのか」と、実体験とリンクさせることができ、物事がより立体的に見え、ストンと理解することができました。また、絵本の読み聞かせや人前で歌うことも芸能生活で培った力が生きてくるわけです。実習中、先生たちが「せっかくなので、ぜひ何か歌ってください」と言ってくださったので、ギターの弾き語りライブをして大盛り上がりしました。「つるの先生のライブがきっかけでギターや音楽に興味を持つ子どもがでてくるかもしれませんね」と言われましたが、そうなんです。そんなことがあったらいいなという“ねらい”が僕にはあったんです。
保育を学び、子育てに関する視点は広がりました
保育と子育ての違いはいろいろあるのですが、いちばんは、保育生活にはすべてに“ねらい”があるということだと思います。 うちの子どもたちも、幼稚園や保育園で作ったり描いたりした作品を持って帰ってきていましたが、その当時は「わあ、こんな絵を描くようになったのか」「成長したなあ、かわいいなあ」とひとしきり愛でたあとは“思い出箱”にしまっておこう……で終わっていました。でも“保育”を学ぶと、次男が持ち帰った作品ひとつ手にとっても「画用紙の質感を大切にしているのかな」とか「松ぼっくりを使って、季節を感じさせているんだな」というふうに、遊びの中で能力を成長させる“ねらい”を読み取れるようになりました。 幼児教育は、小学校のように科目に振り分けられたカリキュラムで学ばせるのではなく、子どもたちの遊びや生活習慣のなかに「五領域」といって、子どもを育むための基礎(表現、人間関係、健康、環境、言葉)を培う力を取り入れる“ねらい”を持たせているんです。だから、園での遊びにはすべて意味があることなんだと知り、園や先生方への尊敬の念が一層深まりました。 幼児教育を学び、保育の現場や環境を知ることで、僕がこれから関わっていこうとする方向性にも変化というか、気づかされたことが多く課題が見つかってきたように思います。 乳幼児期は、人間形成において、とても大切にしなければいけない時期です。そして、その時期に関わる先生たちや環境は親御さんと同じくらい大切な存在。でも、保育の世界の現状をみると、まだまだ閉鎖的であったり、地味で過酷な現場だったりするんです。学びの段階では、幼児教育に熱や夢を持っていても、いざ現場に出ると辛いことが先行してしまって、幼児教育の世界から離れてしまう方が多いと聞きます。そんな環境を少しでも明るく、すてきな世界にしていく一助となりたいと、今は考えています。幸い、発信する術やキャリア、5人の子育て経験、そして専門知識や保育現場の実情も知ることができた僕だからこそできることを模索しつつ、本当の意味での「子どもど真ん中」の社会作りをしていきたいなと思っています。