「『わからない』じゃ困るんです」…部下から突き上げられた「50歳の幹部自衛官」が涙を流して絞り出した「悲痛な言葉」
内部から総合職へ抜擢
遠い将来、役員を狙える射程圏内へと優遇されている大学新卒の総合職がA幹部ならば、内部から優秀な専門職や事務職に就く人材を若くして総合職へと登用する制度――それが「B幹部」だ。 このB幹部は、旧軍でいうところの下士官に相当する若手の曹の階級を持つ者のうち25歳以上35歳以下の者から「一般幹部候補生(部内)」という試験により選抜。先でも触れた陸海空それぞれの幹部候補生学校に入校の後、約1年後、幹部自衛官として任官する。多くは3尉へと任官するが、大学院修士課程を卒業している者はA幹部同様、2尉への任官となる。 A、BとくればCもある。「C幹部」と呼ばれるそれだ。これは35歳以上50歳未満の現場のベテラン、スペシャリストを「総合職」すなわち幹部自衛官へと登用する制度だ。 今の自衛隊では、A幹部(防大、一般大)、B幹部(内部の若手専門職からの登用)、C幹部(現場のスペシャリストからの登用)という3つが幹部自衛官となるためのルートである。 現在の自衛隊では、幹部自衛官たちはABCの区分の違いはあれ、第一線部隊はもちろん、通常、「幕」と呼ばれる東京・市ヶ谷にある陸海空の幕僚監察部をはじめ、全国にある方面隊や地方総監部といった機関(自衛隊の行政機関、役所)では、すべて対等平等に扱われているという。
学歴関係なく働ける環境
「意外に思われるかもしれませんが、公務員世界のなかで自衛隊は、学歴など関係なく、働けるのが有難いですね」 こう語るのは海の1尉で、現在、関東地方の第一線部隊で勤めるタケカワ氏だ。年齢は50歳を超えたばかり。小学生の頃に観たリチャード・ギア主演の映画『愛と青春の旅立ち』、そして同じくトム・クルーズの『トップ・ガン』に憧れて、まず目指したのが海上自衛隊第1術科学校生徒部(現在は廃止。陸自高等工科学校の海自版ともいえる制度。自衛隊の高校的存在)だった。 だが難関突破出来ず。高卒後、防大や一般曹候補学生といった自衛隊への門を多数叩き、念願かなって、どうにか当時、存在した曹候補士(定年退職まで雇用が保証されている隊員)として入隊を許される。 「私という人間は、要するに、勉強が苦手。というが出来ない。それでドンくさい。だから入隊後は苦労しました」 謙遜を交えながら語るタケカワ1尉だが、入隊時の若手の時代、セーラー服の制服に身を包んでいてもずっと子どもの頃からの夢である幹部自衛官への道は諦めきれなかったという。 だから大学卒程度で受験可能な一般幹部候補生への受験を意識し、通信制の大学にも入学。勤務の傍ら学業にも勤しんだ。7年かけて大学卒業、「法学士」の学位も取得した。