The Last Dinner Partyが語る過剰の美学、この時代に嘘偽りのないバンドであること
スパークス、日本のカルチャー、音楽を通じて伝えたいこと
―最近、ライブでスパークスの「This Town Ain’t Big Enough for Both of Us」をカバーしていますね。 アビゲイル:「This Town」を演奏するのはワークアウトみたいで大好き。すごく面白い曲。かなり変わってて最高。 オーロラ:私たちは見せびらかすのが好きなの。 エミリー:2年前に学校の友達が「あなたたちスパークスに似てるって気づいてる?」ってメッセージとこの曲を送ってきて。「えっ、これ大好き!」ってなった(笑)。本当にちょっと私たちみたいに聴こえる、いい意味で。しばらく話していて、カバーやってみようかってことになった。そうしたら、何も変える必要がなかった(笑)。 ―スパークスのどこがいいと思いますか? エミリー:最近ドキュメンタリー(『スパークス・ブラザーズ』)を見たんだけどすばらしかった。彼らは進化し続けていて、どんな失敗も成功も彼らにとっては十分に大きすぎるってことはない。前進し続けて、ジャンルを変えて、流行に迎合しない。特に『Kimono My House』には私が音楽で好きなところが最高に詰まってる。クイーンのロックとABBAのポップなフック、反復。 ―ライブのたびに「ギリシャ神話のミューズ」や「花言葉とヴィクトリア時代」、「グリム童話」などのドレスコードを設定しているのも面白いですね。最近は決めていないとのことですが。 アビゲイル:もう特定のドレスコードを決めなくてよくなったのはいいことだと思う。いま私たちのファンは自然にドレスアップして、自分のアイデンティティを探究してる。ライブを始めた頃は、自分たちの衣装を計画するときにテーマを決めてたから、じゃあ観客にも教えようってことになったの。そうすることでみんなが参加したり作ったりする空間ができるから。ストリートで自分がしたい格好をする自信がない人も、TLDPのライブならできる。他の人たちもやってるし、安全に感じられる空間で、自分自身を表現できるから。いまではみんなただドレスアップしてライブに来るってわかってる。それって本当に本当に美しいしわくわくする。だから今夜のライブもみんながどんな格好で来るのか楽しみ! ―バンドのDiscordサーバー「The Parlour」も面白い試みですね。どんなふうに運営していますか? アビゲイル:レーベルと話して、世界中のファンが交流してお互いにつながれる場所がほしいってことになって始めたの。私たちが個人的に運営しているわけじゃないんだけど、ファンアートやちょっとしたメッセージをよく見に行ってる。すごくキュート。 ―Discordはゲーム文化と親和性が高いアプリですが、あなたたちはゲーマーですか? アビゲイル:あんまり。私はゲーマーじゃないな。 オーロラ:ゲームはクリスマスにやる。それ以外の時もやるとゲーム以外何もできなくなっちゃうから。だから特別な期間限定。 エミリー:『Horizon』とか『HALO』とか……。 ―初来日ということで、日本のカルチャーで特に関心のあるものは? アビゲイル:最近本当に漫画にハマってる。伊藤潤二が大好き! ファッション的には『NANA』とか『富江』とか、雑誌「FRUiTS」とか。ああいうルックとか美学とかほんと好き。『新世紀エヴァンゲリオン』も。 オーロラ:スタジオジブリ。小さな妹がいて一緒に観るんだけど、すごくユニークで美しい。あとファッションも、今日ここに来るときにもただ歩いたり車から外を見たりしてるだけで、「うわ! 見て!」って(笑)。 エミリー:これまで出たもの全部。 ―ひとりでやるのではなくバンドでやることの強みはどこにありますか? アビゲイル:楽しい(笑)。ステージに立つのに加えて、ステージの外で一緒にいるのも本当に重要。私たちは急に大きくなって強烈な体験をしていて、ソロ・アーティストだったらもっとずっと大変だし孤独だったと思う。私たちはまったく同じことを一緒に体験しているから、お互いにお互いの面倒を見て、地に足をつけて、ノーマルでいて、起こっていることに圧倒されずにいることができる。 ―音楽を通じて伝えたいことは? アビゲイル:これは何度も言っているんだけど、嘘偽りなく真面目であることはこの時代に何かをやるにあたって本当に価値ある通貨だと思う。本当に自分自身と自分のコミュニティのために、お互いを引き上げるためにやることが大事。これが流行ってるからとか人気だからとかでやることには本当に反対。本当に自分自身に誠実になることを恐れずにいられたら正しい人々を惹きつける空間を作れるし、私たちはあなたを愛する。それが私たちの音楽に求めるものかな。 --- ザ・ラスト・ディナー・パーティー 『Prelude to Ecstasy』 発売中 日本盤ボーナストラック収録
Momo Nonaka