政府の基金改革は喫緊の課題:2つの税金無駄使いの抜本的見直しを
経済対策の規模を膨らませる政治的意図も
岸田首相が主張する「予算の単年度主義」の弊害を改める狙いは理解できる部分もあるが、その名のもとに無駄使いが拡大してしまった面がある。本来は例外であるべきはずの、複数年度予算にわたる基金の活用が、常態化してしまったのである。 そして経済対策で基金の積極活用が常態化してしまった背景には、予算の具体的な利用が明らかでない段階で、経済対策の規模を膨らませ、国民にアピールする政治的意図もあったと考えられる。 補正予算編成は、本来は当初予算編成時に想定されていなかった事態への対応であるべきだ。しかし、実際には、経済状況いかんに関わらず、秋には補正予算編成を伴う大規模経済対策を実施することが常態化、年中行事化してしまっている。
本来例外措置であるべき基金の利用と補正予算編成の2つともが常態化
本来例外措置であるべき基金の利用と補正予算編成の2つともが常態化し、その結果、国民の税金の無駄使いが助長されてしまった。岸田首相は基金の膨張を許した責任を取り、抜本的な基金の改革を早急に進めて欲しい。 現時点で政府内での基金見直し案には、予算決定時に数値目標を策定・公表すること、予算措置は3年程度をめどとし、目標の達成状況をみて、次の措置を検討すること、具体的な終了時期を設定すること、毎年度の点検を厳格に行うこと、民間企業への外注を避けること、などが含まれている。こうした見直しが実施されれば、基金の問題はかなり改善するだろう。 基金の抜本見直しと国庫への返納を早急に進めて欲しい。またこれを機会に、常態化してしまった補正予算編成を伴う経済対策の実施についても、国民の税金の有効活用という観点から、大いに見直して欲しいところだ。 (参考資料) 「社説:政府の基金見直し 安易に増やした責任重い」、2023年11月27日、毎日新聞 「基金の膨張 本当に必要か徹底的な検証を」、2023年11月26日、読売新聞速報ニュース 「【社説】基金見直し指示 活用進めた首相は反省を」、2023年11月26日、西日本新聞朝刊 「(社説)基金の乱用 無駄の温床にメスを」、2023年11月25日、朝日新聞 「基金予算、3年めど 「水ぶくれ」抑制狙う 政府見直し案」、2023年11月23日、朝日新聞 「基金、数値目標「なし」3割 政府、ルールづくり着手 行政レビュー「3年で達成確認」提言」、2023年11月12日、日本経済新聞 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英