レジェンド葛西紀明 復活の理由は再チャレンジにあり
6月6日、52歳になったスキージャンプ界の「レジェンド」葛西紀明選手。 52歳になったばかりの今の心境を聞くと―「なんにも変わらないですね。衰えも感じないですし、普段通り」と即答。 51歳の昨シーズンは 2月のTVh杯で8年ぶりに優勝を果たすなど国内大会で結果を残し、4年ぶりにワールドカップのメンバーに復帰。シーズン終盤はヨーロッパを転戦し、上位30人に与えられるワールドカップポイントも4試合で獲得しました。 世界が驚いたアラフィフの活躍は、目標通りだったといいます。 「昨シーズンは自分の中で目標と言うか予定というか、そういうのを立ててやってきたんですけど、それがことごとくうまくはまったというシーズンでした」 世界の舞台に帰ってきたレジェンドを国際スキー連盟(FIS)は「伝説的な飛行感覚と驚異的な体力」と賞賛。新たに2つのギネス世界記録が認定されるなど4年をかけて果たした復活を葛西選手は自身にとっての「特別な言葉」で表現します。
「這い上がってきたですね。97年に他界した母親(幸子さん)に言われていた言葉だったんですよ。どんなに調子が悪くなってもお前はどん底から這い上がってくる男だから絶対できると手紙にも残してもらってるんですよね」 しかしその過程では大きな苦しみも味わいました。 「今までは何度も挫折やスランプなどに当たってきても1年くらいで乗り越えてこれた。今回は4年ずっと低迷してやっぱり不安になりましたね。引退かというのもチラチラ見えてきたりしちゃった。若干、諦めモードもあった。(試合に向けて)減量しなきゃならないのに食事に走っちゃったり、調子が悪いから、まあこれぐらいでいいかみたいな安易な考えもあった」 そんな自分との決別を決意したのは去年、51歳の夏でした。 「このままダラダラ過ごしたジャンプ生活なのかなと。でもそれは嫌だった。やっぱり負ければ悔しいんですよ。まだ俺はまだ負けたくない気持ちがあるんだ、勝ちたいっていう気持ちがあるんだ、調子が悪いからしょうがないなみたいなその“しょうがない”をなくした」 特に大きく見直したのがジャンプ選手にとって重要な体重調整の仕方だと言います。