「フィアットらしいコシのある足まわり、のんびりクルーズで幸せな気分になれる」by 山田弘樹 これが2024年の注目車、ドブロに乗った自動車評論家3人のホンネだ!
中身は同じでも、流れているのはイタリアの血!
今年もやりました「エンジン・ガイシャ大試乗会」。2024年、大磯大駐車場に集めた注目の輸入車36台にモータージャーナリスト36人が試乗! ステランティス・グループのミニバン三兄弟の最後に登場したフィアット・ドブロに乗った森口将之さん、今尾直樹さん、山田弘樹さんのホンネやいかに? 【写真9枚】日本のミニバンとどこが違うのか? フィアット・ドブロの詳細画像をチェック ◆「基本の設計思想に感謝」森口将之 ドブロに触れる機会があったら、スライド・ドアの開口部を見てほしい。日本の多くのミニバンと違って、ちゃんとサイドシルがある。たしかに乗り降りのたびに、敷居を跨ぐような動作は必要。でも走り出すと、こんなに背が高いのになんで?と思ってしまうほど、しっとりした乗り味に魅了される。 そのテイストはフィアットというよりはシトロエン的で、シャシーのチューニングは姉妹車のベルランゴと同じようだけれど、リラックスして過ごせるのだからキャラクターにはお似合いだし、基本を大切にした設計思想に感謝したくなる。 ディーゼル・ターボの粘り強さと、的確に変速する8速ATのコンビにも感心。背の高い箱をストレスなく動かしつつ、高速道路では航続距離の長さを発揮。どこまでもいけそうという気持ちにさせてくれる。 デザインはプジョーを含めた3姉妹の中ではツール的。この点はフィアットらしい。なので最近限定車で登場したロングボディの2列シート仕様が、もっともふさわしいのではないかと思っている。 ◆「イタリアの血が流れている」今尾直樹 リアのスライド・ドアを開けて後席にバッグを置き、いざそのドアを閉めようと思ったら寸毫も動かず。押してもダメなら引いてみな……と、いろいろやってみる。閉まらん。同乗する会員の方が試してみると、あっさり閉まる。ありがたや。私には閉められないけれど、会員さんには閉められた。ガイシャにはクセがある。それが日常にささやかな喜怒哀楽をもたらす。 兄弟車のシトロエン・ベルランゴとどこが違うのか? と思いながら発進。会員さんとおしゃべりしながら西湘バイパスを走る。ベルランゴと機構的には同じはずだけれど、足まわりはどことなくイタリア車っぽい。バネは記憶のなかのベルランゴ同様ソフトだけれど、ベルランゴよりストロークが抑えられていて、ダンピングが効いている。よりフラット感がある。 130ps、300Nmの1.5リッター直4ディーゼル、8ATのギア比も含めてフランス勢と同じなのに、より活発に回るような気がする。走行距離が9000kmに達しているから? いやいや。中身は同じでも、流れているのはイタリアの血。それがガイシャってもんだぜ。 ◆「とっても楽しい!」山田弘樹 ステランティス・グループで基本設計を共用する商用バン・シリーズの中で、一番最後に出てきたドブロ。その走りはひとことで言うと、とっても楽しい。 ショート・ホイルベース同士で比べるとアクティブ・ムーバー色が強いプジョー・リフターよりも断然乗り心地が良く、ふんわりコンシャスなシトロエン・ベルランゴよりもハンドリングが正確で直進安定性が高い。 ジャーナリスト同士の会話だと「最後に出てきたから、うまくまとまっただけでは?」なんて意見もあったが、ともかく両車の中間的な味付けには非常に好感が持てた。それはまさにフィアットらしいコシのある足まわりがもたらす乗り味であり、高速道路の巡航はのんびりクルーズで幸せな気分になれる。 そしてワインディング・ロードでは、予想以上の粘り腰で、高い重心を支えながら気持ち良いコーナリングを披露してくれる。1.5リッターディーゼルターボは決してパワフルではないけれど、8段ATのギア比を使ってときに懸命に、ときにトコトコ走らせていると、「これでいいかな」と思えてしまう。国産ミニバンでは得られない何かが、ドブロにはある。 写真=郡大二郎(メイン)/神村 聖(サブとリア) (ENGINE2024年4月号)
ENGINE編集部
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