火の粉が幻想的に舞う 韓国の地方伝統の火祭り「咸安落火ノリ」
いよいよ咸安へ! 無形遺産の落火ノリを鑑賞
大邱をあとにして「咸安落火ノリ」が行われる慶尚南道の咸安郡へ。高速道路を使ってバスで1時間半ほどで到着しました。火祭りが行われるのは自然豊かな里山の景色が広がるのどかなエリア。近くにはユネスコの世界遺産にも登録されている咸安末伊山古墳群もあります。 咸安落火ノリは今から300年以上前の朝鮮時代に人々の安寧と豊作を願って行った行事がはじまりといわれ、慶尚南道の無形遺産にも指定されています。ちなみに「놀이(ノリ)」は韓国語で“遊び”という意味なのだそう。 火祭りの鑑賞は、池の周りの観覧席に腰を下ろしたり、橋の上から見たりと自由なスタイル。10月末とはいえ風がなかったので、寒さはあまり感じませんでした。点火されてから30分ほどで見頃となり、池の水面に火の粉が舞い落ちる幻想的な光景が広がります。 この日は伽耶琴(カヤグム)などの韓国伝統楽器を使った生演奏も。胸に染み入る音楽と、はらはらと絶え間なく落ちる火の粉、その様子が反射する水面の美しさは感動的で、素晴らしいヒーリングタイムでした。火と水による癒やし効果は絶大ですね! ちょっとした振動や風によって辺りがパァッと明るくなるくらいに一気に燃え上がる瞬間には、大きな歓声があがっていました。 落火ノリ保存会の事務局長さんが「一度観ると誰でも必ずまた観たくなる」とおっしゃっていましたが、本当にその通り。機会があれば、また火祭りの日に咸安を訪れて、次回はカメラのレンズ越しではなく、最初から最後まで肉眼で鑑賞したいなと思っています。 咸安の人々の安寧を願って始まったとされる伝統的な火祭りは、落ちる火の粉ひとつひとつが儚く美しく、現実の世界にいるとは思えないような不思議なひとときを味わうことができました。今回のように旅行商品としても運営されるようになった咸安落火ノリ。今後は韓国旅行の人気コンテンツになるかもしれませんね (文・写真 こだまゆき/ 朝日新聞デジタル「&Travel」)
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