【若松乾杯条例10年】地場産業振興の事例に(10月12日)
会津若松市が「会津清酒の普及の促進に関する条例(乾杯条例)」を制定して今年で10年を迎える。「日本酒の日」の今月1日には鶴ケ城で10周年記念の乾杯イベントが催され、多くの来場者とともに節目を祝った。条例の趣旨に改めて理解を深め、地場産業のさらなる振興につなげる契機となるよう願う。 地元産日本酒などでの乾杯を推奨する条例は、2013(平成25)年1月、酒どころ伏見で知られる京都市で初めて施行され、全国に広まった。県酒造組合によると、2023(令和5)年1月末現在、県内では南会津町、天栄村、喜多方市、会津若松市、郡山市、二本松市の6市町村が設けている。 このうち、会津若松市の乾杯条例は、2014年12月に制定された。会津清酒での乾杯の習慣化をはじめ、歴史ある会津清酒文化の理解と継承を図ることを目的に市民や事業者に協力を求める内容で、守らなくても罰則などはなく、個人の嗜好[しこう]や意思を尊重するよう配慮する旨の文言も盛り込まれている。
12の蔵元が加盟する会津若松酒造協同組合の関係者によると、条例制定から10年間で、市内の各種会合では日本酒で乾杯する場面が格段に増えたという。例えば、市内のホテルや老舗料亭などでは、日本酒がつがれた乾杯用の杯がテーブルにあらかじめ用意され、乾杯した後は、日本酒に限らず好きなお酒を楽しむのが一般的になってきた。宴席での柔らかな約束事にもかかわらず、目に見える形で定着しつつあるのは、ひとえに「地場産業を応援しよう」という市民や事業者の協力のたまものと言える。 県内では近年、ビールやワイン、ウイスキー、焼酎などの地酒づくりも注目を集めている。地方創生が叫ばれる中、地場産業として定着、発展させていくには、地産地消による県民の後押しが欠かせない。日本酒に限らず、県内産の地酒をもり立てる上で、会津若松市の取り組みは大いに参考になるのではないか。 地酒での乾杯は、地場産業と郷土への愛着を深めるとともに、県外から訪れる人にその魅力をアピールする機会にもなる。条例うんぬんは別にして、県内全域で地酒での乾杯を勧める機運が高まるよう期待したい。(紺野正人)