【特集】“運命のタックル”が変えた2人のラガーマンの未来 ケガした選手は「頸椎損傷」、ケガさせた選手は“縦隔がん”に…試練と闘いながら再びグラウンドでの“ワンプレー”を目指す、2人の友情と復帰に密着
田中伸弥さんは、近畿大学のラグビー部を経て、今は「ジャパンラグビーリーグワン」の『三菱重工相模原ダイナボアーズ』に所属しています。中川さんにとって田中さんは、学生時代から切磋琢磨してきたライバルであり、“あのワンプレー”で中川さんにタックルをした選手でもあります。
(田中伸弥さん) 「その時は、ケガのことはあまり考えていなかったので、必死にプレーしていたという感じです。ラグビーだから仕方ないと思うようにしていたが、自分がケガさせてしまったので、すごく落ち込みました」
(中川さん) 「僕もですけど、伸弥も近畿大学が全国大会に行くために頑張ってきて、僕も試合を通してわかっているので、その中でのケガは仕方ないです。正々堂々試合して、僕が負けたと思っているので、恨むところは本当にないです」 今でも言葉を交わし合う2人は、共に闘ってきた友人です。 実は、田中さんもまた、大きな壁を乗り越えてきた選手でした。
学生時代は近畿大学の中心メンバーとして、ラグビーに打ち込んでいた田中さん。しかし、大学4年の冬、せきが止まらず病院へ行くと、“縦隔がん”で「5年生存率は50%」と告げられました。中川さんとの試合から、わずか10日後のことでした。
(田中さん) 「もう生きるために必死で、頑張れた理由は、シンプルに『もう一回、普通の生活に戻りたい』という、ただただ、その思い。その時は、正直ラグビーしたいとはこれっぽっちも思っていなくて、『普通の生活をして、普通に生きたいな』と」
先が見えない中、もう一度ラグビーに導いてくれたのは、大ケガでリハビリを続ける中川さんでした。
―(中川さん/2017年当時・メッセージアプリで) ―「まさややで!しんやもがんになんか負けやんとガッツ溢れる感じで頑張れよ!応援してる!俺も死ぬ気でがんばるし!頑張ろな!」
―(田中さん/2017年当時・メッセージアプリで) ―「しんやです。何言ったらいいかわからんけど、とりあえずまさやは、いつもの明るい感じで頑張ってください。俺も抗がん剤を打ちながら、がんと闘ってます。お互い頑張ろー!」
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