プラチナ受賞「土狗」、地元好みの味で勝負 台湾産の清酒、バー開業の男性プロデュース
フランスで2017年から開催される日本酒コンクール「Kura Master(クラマスター)」で台湾産の清酒が2024年、純米酒部門のプラチナ賞を受賞した。プロデュースしたのは台北で日本酒バーを開く江偉さん(50)。このコンクールで台湾産の受賞は初めてで、今後も台湾人好みの清酒をどんどん造っていきたいと夢を語る。(共同通信台北支局=渡辺靖仁) 江さんが日本酒に興味を持ったのは、自動車部品を扱う仕事で日本に滞在していた約10年前。各地の地酒を飲むうちにその多様さに魅了され、台湾に戻ってから日本酒バーを開業した。 ただ台湾では若い世代を中心に果実酒などが好まれ、日本酒に抵抗のある人も多い。「理由はおいしい日本酒を飲んだことのある人が少ないから。おいしい清酒を造ってみたい」。新型コロナウイルス禍で時間に余裕ができた2021年、目標に向けて動き出した。 当初から困難の連続だった。台湾で清酒を造る技術のある醸造所は「3カ所だけ」(江さん)。交渉は難航したが、ようやく中部・台中の醸造所の協力を取り付けた。
台湾には酒米がなく、米選びにも苦労した。南部・台南の農業専門家の助言で、日本のコシヒカリに近い食用米「台南16号」を使うことに決めた。これが奏功し「予想外」(江さん)の濃厚な香りを生んだ。 日本酒を飲み慣れていない台湾人にも受け入れられるようにと、甘口の生酒にし、思い通りの味の380本が完成。昨年、愛犬にちなみ、中国語で地元の犬を意味する「土狗」から「土狗1号」と名付け売り出した。 軽い気持ちでコンクールに応募したのは今年初め。2024年6月に受賞決定したときは複雑な気持ちだったという。「販売できる在庫が既に残っていなかったから」 自分の酒蔵を持つのが最終的な夢だが、当面の目標は「土狗2号」の企画だ。「日本のさまざまな酒蔵と協力し、台湾人の立場から日本の酒造りにも関わりたい」と意気込んだ。