【EVの素朴な疑問】最近よく聞く「800Vアーキテクチャー」って何? 今までとどこが違うのか?
コストの壁はあるものの今後は急速に増加するはず
800V化にはほかにもメリットがある。配線類の線径を細くすることができるので、車両重量そのものを低減できるのだ。配線=ワイヤーハーネスは想像以上に重いのだが、電流を倍の電圧で流すことができれば、その線径は理論上は半分で済む。モーターの小型化にも貢献し、さらにハーネスからの放熱量も減ることからクーリングシステムも簡略化できる。つまり車両の軽量化が進むことで航続距離が延び、電費が良くなるのだ。この理屈をモーター本体に活用すれば、小型化と高出力化を両立することも可能だ。 とは言えデメリットもある。エンジン車と異なり、EVは電装部品の数が圧倒的に多く駆動系以外での消費電力も大きい。バッテリーや駆動系を中心に800Vで作動させる一方で、空調や各種制御にはDC-DCコンバーターで48Vに降圧させる系統も織り込まなければならない。これらの要件は設計段階から盛り込まなければならず、それゆえ“アーキテクチャー(構造・様式)”と呼ばれる。さらに現状ではまだ400Vが主流のため量産効果が発揮できず、コスト面ではかなり割高になっている。 そのメリットを活かすには急速充電器の性能アップも欠かせないが、高出力化に伴って充電ケーブルの発熱量も増える。それを抑制するにはケーブルを空冷ではなく液冷にするのが効果的であるが、これがまだ高価だ。また充電器本体のマネジメントもさらに細かく調整することが求められる。また、国や地域で事情は異なるが、設置に関連する費用やランニングコストの問題もある。ビジネスとして成立しなければ、事業者の参入は難しい。 とは言っても、すでに800Vアーキテクチャーを採用するEVは世界的に増加しつつある。2025年以降に登場すると言われる日本の次世代EVも、この流れに乗ってくるのは間違いないところだ。