Snow Man最年長メンバーは俳優として大成するのか。フジ新ドラマで“明白”になったのは
深澤辰哉が提示する存在の主張
空白のワンショットで一呼吸、しっかり丁寧に置いたことで、そのあとの深澤辰哉の初登場がぐんと引き立つ。直前の空白を残像としてだぶらせるかのように、今そこにちゃんといますよという存在のさりげない主張。 他の俳優なら間延びしていたかもしれない。これは絶対に深澤辰哉でなければいけない。みたいな存在の主張を提示している。深澤辰哉は、画面から浮き立ちながらも画面に溶けいる。 存在そのものの呼吸が聞こえる。だから「夏野」と呼ぶ、その呼び声が強調される。美羽にとっては美しい記憶を呼び起こす声。でも物語上の意味をはるかこえて、深澤の声はぼくらに直に語りかける。
段階的に変化したふたりのささやき
美羽と稜は、中学生以来の再会だが、お互いに相変わらずだな、なんだのと、時間の隔たりを感じさせない。図書館だというのに、周囲を気にせず興奮気味に会話するふたりに対して、図書館内の静寂をかき乱す声量に対して、画面外から咳払いで注意される。 稜も着席して仕切り直す。近況を報告し合う。声量はそれほど変わらない。するとまた会話が白熱する。今度は「お静かにお願いします」としっかり怒られる。さすがにひそひそ声になる。この声量の変化は、耳で聞かせるだけでなく、目でしっかり見る声として演出されている。 本棚と本棚が向かい合う通路に置かれたカメラが、着席して向かい合う松本と深澤を真横から捉える。ふたりが話すセリフの内容はどうでもいい。それより大きな声量からひそひそ声へと段階的に変化したふたりのささやきを映画の一コマのように感じていたい。
どんどん重宝される存在になると確信した
深澤辰哉の演技を見るのはほとんど初めてである。恥ずかしいことに今さら俳優としての彼にすっかり魅了された。筆者は、彼が所属するSnow Manのにわかファンにも満たない。でもだからこそ初見のあざやかさを感じられたのだと言い訳しておきたい。 Snow Manの他メンバーだとしょっぴーこと、渡辺翔太にも最近強く魅了されている。中村アンとの共演ドラマ『青島くんはいじわる』(テレビ朝日、2024年)で渡辺が演じたタイトルロールには恐るべき求心力があった。どうやらSnow Manとは、初見の者を強く強く引き付ける俳優集団でもあるらしい(『わたしの宝物』と同じフジテレビ木曜10時枠で2022年に放送された『silent』の目黒蓮など、メンバー全員の素晴らしさについてもふれたいが我慢)。 彼らにとって初の冠番組である『それSnow Manにやらせて下さい』(TBS)でいつも快活なリアクションで視聴者を晴れやかな気持ちにする佐久間大介は、Xアカウントを駆使して他メンバーが出演するドラマをリアタイ実況している。『わたしの宝物』放送中には「ええええ!!!!」や「ああああ」など短いリアクションを連投し、「1話あたり34回投稿」であることが、『週刊ナイナイミュージック』(フジテレビ)10月30日回でカウントされていた。 X上でも快活があふれている。そこいらのドラマウォッチャーではこの熱量に到底勝てない。我らがしょっぴーもまた佐久間のポストをリアタイしながら見ているらしい。グループ内で出演と視聴が相互関係になっているのは頼もしい。深澤の映画的な存在感もきっとSnow Man特有の関係性の中で育まれた才能なのだろう。単なるアイドル俳優枠としてではなく、映画やテレビドラマでどんどん重宝される存在になると確信した。 <文/加賀谷健> 【加賀谷健】 音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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