取引先「うわさ聞いていた」 福島・いわき信組10億円超不正融資、連鎖破綻を危惧か
いわき信用組合(福島県いわき市)で明らかになった10億円超の不正融資を巡り、いわき市内の大口融資先への不正融資が始まったきっかけは、旧経営陣が別の大口融資先も業績不振となったことを受け、大口融資先企業二つの破綻に伴う経営破綻を危惧したことが背景にあったことが、分かった。 本多洋八理事長は15日の記者会見で「旧経営陣が『当組合も破綻に追い込まれる』と考えた」と話した。不正融資は、旧経営陣や大口融資先企業の家族や親族の個人口座を介して融資する「迂回(うかい)融資」で、2008年7月ごろから始まり、11年2月ごろまで続いた。 本多理事長は、長期間にわたり不正が隠蔽(いんぺい)された要因として「正常な企業統制をも無効にさせてしまう経営者の統治の問題がある。組織的な相互けん制が機能していなかった」と話した。 この問題を受け、11月1日に退任した江尻次郎会長ら旧経営陣を巡る取引先の受け止めはさまざまだ。50年以上取引している80代男性は「10年以上前から不正融資しているとのうわさは聞いていた。いつの日か表に出るとは思っていた」と話した。その上で江尻氏について「高校の同級生ら学友との関係を大事にしていた。その一方、経営面では意見を言わない都合のいい人間を周囲に配置していた印象だ」と語った。 会社経営の60代男性は「(江尻氏は)能力の高い人だったと思う。地元の企業を助けたり、育てたりするのが信用組合の特性。その考えが今回の行動につながってしまったのかもしれない」と話した。
福島民友新聞社