「安くて高品質」日本のサービスの大問題とは…低価格だから給料も安すぎるという「厳しい現実」
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安くて質の高いサービスを提供する日本
日本の労働力が安いという問題は、多くの人が知るところである。 これはサービスの受益者である消費者一人ひとりにも直結する話である。 日本生産性本部が行った「サービス品質の日米比較」の結果から、生活に身近な29種類のサービス(価格に関する調査が行われていない官公庁のサービスを除けば28種類)の品質と価格について、日本と米国のどちらが優れていたか、またどちらが安かったかが見えてくる。 その調査結果によれば、28種類のすべてのサービスで日本のサービスの質が高いという結果となっている。 一方、価格については大学教育や病院をのぞいて、日米でほとんど拮抗した結果となっている。 ここからわかるのは、日本のサービスは、高水準かつ低価格で提供されているということだ。
適正な賃金を受けとれるように
市場原理主義国家のアメリカよりも、日本のほうが低価格で高品質なサービスを提供していることは驚きかもしれない。 日本の生産性の低さは、実はサービスをどう評価するのかという問題でもある。 どういうことだろうか。 〈同調査においては、日米のサービス価格と品質の分析に合わせて、日本のサービスのどのような点が優れているのかも洗い出している。 調査の回答者は、タクシーや宅配便など運輸関連のサービスであれば「正確で信頼できるサービスを提供してくれる」こと、飲食・小売関連サービスであれば「接客が丁寧である」ことや「迅速にサービスを提供してくれる」ことなどについて、米国よりも日本のほうが優れていると考えていることがわかっている。 このように見ていくと、こうした生活に身近な仕事について、働き手はその仕事の価値に見合った適正な賃金を受けとれるべきではないか。 そして、このような仕事に対して対価をしっかりと支払うべきだという提案は、決してバラ色の選択肢ではない。 適正な賃金を支払うということは、その分のサービス価格の上昇を社会が甘受すべきであるということであり、これはすなわち消費者が相応の負担を受け入れるべきだということにほかならないからだ。〉(『ほんとうの定年後』より) 日本人や日本企業は、どう変わるべきか。 すっかり慣れてしまった低価格で高品質なサービスという大きな利益を放棄し、こうした仕事に従事する人に「適正な対価」を支払うことができるか。 〈働き手が不足し、その希少価値が高まっている現代において、こうした痛みを日本に住む全ての人が受け入れ、消費者優位の市場環境を転換させていくことができるかが、今問われているのである。〉(『ほんとうの定年後』より) つづく「年収100万円、70~80代に幸せな人と不幸な人の『決定的な違い』」では、年収が激減する70代以降をどう生きればいいのか、データを確認しながら徹底的に読み解く!
現代新書編集部