東出昌大がスキャンダル以降に“半分山暮らし”をする理由を初告白
関東某山の奥、トタン屋根とビニールシートで囲まれた炊事場の前で、東出昌大はカレーうどんを作っていた。狩猟者集団として立ち上げた「青狼會」のTシャツを着た後輩たちは、東出の指示でネギを切り、食器を用意してくれる。東出はなぜ山に籠もったのか、銃を構えるのか。謎に満ちた半自給自足生活、彼の”今”に迫った――。 ⇒【写真】東出昌大さんと愛犬のしーちゃん
100頭以上撃ってどの子も忘れられない
──小誌連載いつもありがとうございます。今日は僕ら以外にもお客さんがいるんですね。 東出昌大(以下、東出):狩猟を通して知り合った人やご近所さんがきてくれています。今、新しく自分の家を建てていまして。彼らにその手伝いをしてもらっていたんです。 ──仲間と協力して暮らしているんですね。 東出:うーん……「仲間と協力」というと、ちょっと暑苦しい。お互い「手が空いてるから手伝うよ」っていう気楽な感じです。カレーうどん、冷めないうちにどうぞ。 ──いただきます。この黒めの肉は……? 東出:イノシシとシカですね。自分で仕留めたものや、貰ったクマ肉などは貰って冷凍庫で保管して食べています。 ──狩猟免許はいつ取ったのでしょうか? 東出:8年前、28歳の夏です。23歳のときに千松信也さんの『ぼくは猟師になった』を読んで「こんな生き方があるのか」と興味を持ったのですが、役者の仕事優先で難しかったので、5年越しでようやく念願叶った形です。 ──最初に撃った獲物は。 東出:今まで100頭以上撃ってきて、どの子も忘れられない。でも最初の衝撃は強烈でした。群馬の師匠・阿部さんと雪で埋もれた山道を歩いているときのことです。阿部さんが「いたぞっ!」と指差した。その方向に大きなシカが一頭。銃を構え、あとはもう引き金を引くだけ……。だけど、いろんな思いが駆け巡り、ためらってしまう。逡巡を振り切り、銃弾を放てば、事は一瞬。まず、発射の反動がヤバい。こんな衝撃があるのかと驚きました。 ──それまで銃を撃ったことはなかったんですか? 東出:射撃場で練習はしてましたが、止まった的を固定した銃で撃つのと、足場が悪く的も動く猟場とでは勝手が違う。撃った衝撃で獣から自分の視線が逸れてしまった。慌てて探すと、四肢をばたつかせ、もがき苦しむ大きなシカが、雪煙を上げながらこちらにズリ落ちてきた。雪面は鮮血に染まり、唖然としている僕に阿部さんの「仕留めろ!」という言葉で我に返った。首にナイフを立てるけど、焦ってるから何度突き立てても、うまくいかない。最後は阿部さんの助けを借りて仕留めました。銃を構えてから止めを刺すまで、1分ちょっとの出来事でしたね。 ──わずか60秒なのに、情報量が凄まじいです。 東出:うん、あの衝撃と喪失感と興奮は忘れない。人間と同じ哺乳類を殺すことは、すごく度胸がいる。でもその感覚ってまだうまく表現できないんです。肉なんて店で買えるのに、なぜあえて動物を殺すのかと聞かれたこともあります。自力で獣肉を獲ることで、新しい世界が見えるんじゃないか、今までの常識や固定観念みたいなのが崩れるんじゃないかと思って始めた狩猟ですが、まだ明確な答えは出ていない。なぜ狩猟に惹かれるのか。それについては一生考え続けるんでしょうね。みんなでカレーを食べている、あそこの椅子の上で黒い犬がくつろいでるでしょ? あの子が下に敷いてるのが、初獲物の毛皮なんです。