反対勢力を抑え「同性婚合法化」まで漕ぎ着けた台湾の「裏ワザ」! 日本でも使えるそのやり方とは…!?
コロナ禍において国民全員にマスクを配布するシステムをわずか3日で構築し、世界のグローバル思想家100人にも選出された若き天才オードリー・タン。自身もトランスジェンダーであるタン氏が、日本の若者に向けて格差やジェンダー、労働の問題からの「解放」をわかりやすく語る『自由への手紙』(オードリー・タン著)より抜粋してお届けする。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『自由への手紙』連載第20回 『「家族って何?」…アジア唯一の「同性婚国」である台湾の若きジェンダーレスが語る「真実の愛」』より続く
「結婚を祝福されたい」という願い
台湾での合法化は、フェミニスト運動とLGBTQ+運動がもたらした勝利でしょう。東アジアには、「結婚は家と家のもの」という家父長制の文化や考え方が根強くあります。そのためか近隣の国家からは、「同性婚が合法なんて想像すらできない」という声が上がりました。 それに対して、私はこう言いました。 「LGBTQ+コミュニティの平等のために運動をしているなかで、結婚の平等を求める人たちについて考えてみてください」と。 彼らが結婚の権利を求めているのは、周囲から祝福される結婚を望んでいるからです。「自分たちの結婚を、何らかの意味や価値をもつものにしたい」という思いがあるからこそ、LGBTQ+の平等を求めて運動するとき、結婚の権利を最優先事項にかかげています。 もしもヨーロッパの一部の国々のように、もはや結婚制度に重きを置かない文化であったら、「法的な結婚なんてどうでもいい」となり、彼らはこのような行動を取らなかったかもしれません。 しかし台湾の人々にとって、家庭生活や結婚に対する考え方は、パートナーが異性であろうと同性であろうと、同じように大切なものです。
「家と家」から「個人と個人」の結びつきへ
そこで私たちは話し合いを行い、国民投票を行いました。 台湾の人々が下した結論は、「同性間の結婚の権利を合法化する」というものでした。異性婚カップルと同等の権利と義務が保障されたわけです。 結婚を登記することができ、パートナーが先立った場合は残された人に相続の権利が生じます。結婚した二人には相互扶養の義務があり、パートナーのどちらかと血縁関係がある子どもを養子にすることもできます。 ただし、この結婚によって、お互いの家族が姻族になるわけではなく、同性カップルの結婚とは当事者間のものです。私たちは国民投票を経て、「家族同士の姻戚関係については文化的判断に委ねる」としました。 「個人と個人の結びつき」という発想は、台湾原住民の発想から得たものでもあります。結婚は個人と個人のものであり、それぞれの家族は関係ない――世界には結婚制度に重きを置かない文化の国もあり、彼らにとって、これは当たり前の話です。 「AさんとBさんが結婚したら、自動的にAさんの両親はBさんにとっても義理の親になる」という、家と家との結婚という概念などもっていないのです。 そういう考え方をする人がいてもいいのですが、台湾で同性婚を合法化した際には、これは非常に重要なポイントでした。 「家族は姻族としての形を取らなくて良い」という手法のおかげで、一部の抵抗勢力の声も下火になったのです。 なぜなら台湾には父系社会の伝統もあり、「先祖や家を守る『永続的結婚』が大切だ」とか「それぞれの親族も姻戚関係になるのは当たり前だ」という考えを主張する人々が一定数います。彼らは「同性婚は個人と個人の関係であるなら、社会的脅威にならない」と見なしたのでしょう。このやり方は、日本でも検討してもいいのではないでしょうか。 同性婚の合法化は、結婚の再定義です。これはソーシャルイノベーションであり、世代や宗教を越えて、本当の意味で市民の考え方を変えました。従来の「家族」という考え方や在り方から解き放たれたということです。
語り)オードリー・タン