分析光る陰の立役者 具志川商の脳性まひマネジャー 選抜高校野球
第93回選抜高校野球大会第7日(26日)の2回戦、21世紀枠の具志川商(沖縄)は昨秋の九州大会準々決勝で0―3で敗れた福岡大大濠に挑み、一進一退の白熱した攻防を繰り広げた。21世紀枠校が一般選考の学校に勝てば6年ぶりの金星。この熱戦の陰の立役者は一塁側アルプスの車椅子席から試合を見守った山城来(らい)マネジャー(3年)だ。 【福岡大大濠 vs 具志川商を写真で】 生まれた時からの脳性まひで脚に障害がある。月2回リハビリに通い、歩く練習をするが、普段は車椅子が欠かせない。自らプレーはできないが、対戦相手の分析などでチームに貢献してきた。今大会でも相手投手の傾向を調べ、宿舎でチームに共有した。一回に同点本塁打を放った新川(あらかわ)俊介選手(同)も試合前に「相手投手は直球が多い」とアドバイスされたといい、山城マネジャーの分析に感謝。喜舎場正太(きしゃばしょうた)監督(33)は「山城マネジャーの分析がすべての打席で生きた。その結果が4得点だった」と活躍をたたえた。 野球を好きになったのは小学1年の時。両親と高校野球の大会を観戦したのがきっかけだった。小3の時には阪神の春季キャンプに。プロのプレーに魅せられ、毎年足を運ぶようになった。 中学時代は、校外のサークルで車椅子テニスに挑戦してきたが、具志川商に入学後、同じ学科になった比嘉力太選手(同)と野球の話で盛り上がり、「野球が好きなら野球部に入ろう」と誘われた。うれしかったが「僕がいることで迷惑にならないだろうか」と3カ月間悩んだ。「3年間しかない高校生活で後悔を残したくない」。そう思って入部を決めると、監督や選手たちが歓迎してくれた。 練習試合ではバックネット裏で携帯を構え、チームメートの投球や打撃を動画に収める。試合後、無料通信アプリ「LINE」で選手たちと共有し、悪い癖などに気付けば個別に伝える。大会になると、対戦相手の試合を見に行き、特徴を分析する。「できることは限られるが、少しでも勝利に貢献したい」と語る。 今冬はトレーニングに励む選手たちを見て、つえを頼りに歩く練習もした。粟国(あぐに)陸斗主将(同)は「来(らい)が必死に歩こうとしている姿を見て、僕らも『負けてられない』と思った。僕たちの悪い点や良い点を客観的に見て、伝えてくれる。チームに欠かせない存在だ」と話す。 22日の1回戦で八戸西(青森)との21世紀枠対決を8―3で制し、勢いに乗って臨んだ2回戦。4―4でもつれ込んだ延長戦でも熱闘を続けたが延長十一回で力尽き、4―8で敗れた。 金星には届かなかったがナインが一塁側アルプスに一礼すると、山城マネジャーは静かに何度もうなずきながらメガホンをたたいて健闘をねぎらった。「負けたのは悔しいが、自分の分析でチームに貢献できてうれしい。もっと分析の精度を上げてチームを強くしたい。夏にみんなで甲子園に戻ってきたい」と話して、仲間の待つ宿舎に引き揚げた。【遠藤孝康、隈元悠太】