奈良で貴重なコラボ企画が開催中、聖武天皇即位1300年の記念年に 風物詩・正倉院展に合わせて
■ 貴重な映像も、聖武天皇の人生をたどる展示
これらの貴重な木簡は、出土してまだ半年ほどであり、保存処理をおこなう前の状態なので、今回のために開発されたケース内に納められ、保管のため管理が難しい「水漬け状態」で展示されている。長年に渡り、全国から出土した約6割もの木簡を保管し、調査研究を続けてきた奈文研の経験と実績があるからこその、貴重な展示といえる。 奈良博「なら仏像館」で出張展示されたエース級の8点について、奈文研の担当者は「『大嘗』の文字が確認できた4点のうち文字がはっきりしている2点や大嘗祭で神にお供えされた品名が記された木簡のなかでも、秋にちなみ栗や梨が記されたものを出しているので、親近感を持っていただけたら」と語る。 一方、聖武天皇が即位した場所「平城宮跡」にある奈文研「平城宮跡資料館」で展示されている初公開の木簡では、「神御茵(かみのおんしとね)」の記載が初めて確認された木簡や紐が付いた状態で出土した木簡などが注目だ。 紐は非常に脆弱で、時間の経過とともに崩れていくため、紐が付いた水漬け状態の木簡が一般公開されるのは非常にレアなことなのだとか。これらの木簡が出土した瞬間の貴重な映像も観ることができる。さらに、平城宮跡の発掘成果から、皇太子時代、大嘗祭がおこなわれた場所、治世下で起きた疫病や地震により仏教に傾倒し東大寺の大仏建立へ・・・といった聖武天皇の人生をたどる展示になっている。 同館の通常展示には、宮殿の復原コーナーがあり、調度品は正倉院宝物を複製したものなので、正倉院展の後に訪れれば、実際にどのように使われていたか実感が湧きやすい。今回のコラボ企画もあわせて訪れることで、普段より何倍も正倉院展や奈良県を楽しめるのではないだろうか。 このコラボの意義について奈良博の担当者は、「即位1300年目に、即位の儀礼である大嘗祭に関連する木簡が発見された奇跡。かつ、2月に出土したばかりで、保存処理される前の木簡がこんなにスピーディーに一般公開されることは非常に珍しいです。しかも、正倉院展にあわせて同時公開されるなんて、2度と無い機会です」と力を込める。 ◇ 特別陳列『聖武天皇の大嘗祭木簡』は、奈良国立博物館「なら仏像館 第13室」で11月11日まで。一般700円ほか。正倉院展「日時指定券」でも観覧可能。秋期特別展『聖武天皇が即位したとき。―聖武天皇即位1300年記念―』は、奈良文化財研究所「平城宮跡資料館 企画展示室」で12月8日まで(無料)。木簡は1期(10月22日~11月17日)、2期(11月19日~12月8日)で展示替えあり。各詳細は公式サイトにて。 取材・文・写真/いずみゆか