軽自動車比較! スズキ・アルト VS ダイハツ・ミライースどちらを選ぶ【セダン系 軽自動車2024】
軽自動車のエントリーモデルであり、燃費の良さが魅力となっているのがセダン系モデルだ。ハイト系全盛の中、普段の足として、セカンドカー、サードカー、あるは初めての愛車として、買いやすい価格に惹かれる方も多いだろう。セダン系の軽自動車のエントリーモデルを比較してみた! 【写真】実は使い勝手の良いアルトとミライース、どちらを選ぶ? TEXT:塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro) PHOTO:DAIHATSU、SUZUKI 1人か2人までの乗車が主ならエントリー軽(セダン系)という選択肢もある 軽のみならず、登録車も含めて最も売れている現代の国民車であるホンダN-BOXの価格帯は、168万9600円~238万2600円。4WDを選んだり、オプションもあれこれチョイスしたりすると、乗り出し価格300万円を超える見積もりが出てきても不思議ではない。いまや、広さや使い勝手、先進安全装備の充実ぶり、走りのクオリティなどではコンパクトカーを超える領域に達している。子どもが2人いるファミリー層でもファーストカーにもなり得る仕上がりだけに、妥当と見ることもできるかもしれない。一方で、軽に300万円オーバーとは……というため息も聞こえてきそうだ。 普段は1人しか乗らない、あるは、ほかにファーストカーやセカンドカーがあるのであれば、軽自動車の新車ではセダン系のエントリーモデルを選ぶ手もありだ。各メーカーや各ブランド(OEM仕様も含め)としては、法人ニーズに応えるジャンルであるのはもちろん、セカンドカーやビギナー向けの乗用にも十分に応えている。 ライバルよりも新しいだけあって高い完成度が光るスズキ・アルト セダンタイプの代表格は、スズキ・アルトとダイハツ・ミライースで、今回はこの2台を比べてみた。初代アルトは、ボンネットバンとして47万円という衝撃価格を実現したことで知られるが、2021年に登場した現行の9代目も106万4800円~150万400円(2023年11月の価格改定後)という、物価高の現在においても十分に企業努力していることが伝わってくる。 現行アルトは、マイルドハイブリッドのあり、なし(エネチャージ搭載車)という設定で、エンジンはNA、トランスミッションはCVTのみ。マイルドハイブリッドは、2.6PS/40Nmというスペックながらも加速時など一定時間、アシストが加わり、700~760kgという軽量ボディを活かしてスムーズな加速が可能だ。筆者は街中だけでなく、高速道路も走らせたことがあるが、思いのほかよく走る、というのが率直な印象。静粛性や乗り心地も十分に合格点を与えられる。 推奨グレードは、キーレスプッシュスタートシステムやフルオートエアコン、運転席シートリフター、チルトステアリング、リモート格納付電動格納式ドアミラー、14インチアルミホイールなどが標準になる「HYBRID X」。なお、衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能などの先進安全装備は、全車標準となっている。「HYBRID S」と「L」、「A」はリヤヘッドレストは未設定(L アップグレードパッケージをのぞく)なので、時々であっても後席に人を乗せるのなら要注意。「L」は、運転席シートリフターは備わるものの、チルトステアリングは未設定で、適切な運転姿勢がより取りやすくなることからも「HYBRID X」がベストチョイスだ。 あとは、メーカーオプションの「全方位モニター付ディスプレイオーディオ装着車」もしくは「全方位モニター用カメラパッケージ装着車」のどちらかを選ぶか、ディスプレイオーディオも全方位モニターも不要であれば、素の「HYBRID X」を選ぶこともできる。全方位モニターは、自車周囲を360°映し出す3Dビューを備えていて、視認性、安全性が大きく高まるだけに、できれば選択したいオプションだ。「HYBRID X」で全方位モニター付ディスプレイオーディオ装着車を選ぶと157万460円(2WD)、全方位モニター用カメラパッケージ装着車にすると153万7460円(2WD)になる。 価格最重視で選ぶのならミライースで決まり 現行ミライースは、2017年5月に発売。モデルチェンジのタイミングもあって、4年後に登場した現行アルトと比べると、走りのクオリティなどの面では分が悪い。WLTCモードは、25.0km/Lで、アルトのハイブリッドの最高値27.2km/Lと比べると若干譲るものの、アルトの純ガソリンエンジン車は25.2km/Lでほぼ同値だ。ミライースの車両重量は、650~740kg(4WD含む)で、内製化している樹脂製バックドアなど、軽量ボディに仕上がっている。ただし、アルトと同じNAエンジンのみだが、軽さの割に軽快感は薄く、乗り心地や静粛性も含めて世代の古さを感じさせてしまう。 ただし、価格は、原材料やエネルギー、物流などの関連費用の高騰により2024年10月1日からは、99万2200円~144万6500円となってもまだ安い。グレードをみると、装備を大幅に省いた「B“SA III”」も「L“SAIII”」は法人ニーズが大半なはずだ。 乗用ニーズの実質的な選択肢になりそうな「X“SAIII”」は、電動格納式ドアミラー、LEDヘッドライト、前席シートヒーター、リヤヘッドレスト、キーレスエントリーなどが標準で備わるが、マニュアルエアコン、14インチフルホイールキャップなどになる。最上級の「G“SAIII”」は、「X“SAIII”」に対し、オート格納式(キーフリー連動)ドアミラー、運転席シートリフター&チルトステアリング、SRSサイドエアバッグ、キーフリーシステム&プッシュスタートシステム、全ドア(車速感応式オートロック機能付)対応のパワードアロック、オートエアコン、14インチアルミホイールが標準化される。とくに、運転席シートリフター&チルトステアリングが用意されるのがポイントで、同機能があるとないとでは、運転姿勢の調整代が大きく異なる。推奨となる「G“SAIII”」は132万円(2WD)となる。なお、2024年9月の一部改良で、車両後方コーナーセンサーが追加され、後退時の車両後方確認性を向上するという法規対応がされたほか、全グレードに先進安全装備の「スマートアシスト」が標準装備されている。 居住性はアルトがややリード 居住性は、両モデルともに背の低いセダン系なので、前後席の頭上空間は見上げるほど広くはないが、圧迫感を抱くほどタイトではない。ミライースは、タンデムディスタンスと呼ばれる前後席乗員間距離が910mmあるため、足元も十分広い。ただし、後席の座面と背もたれは平板かつフラットな作りで、座り心地よりも後席前倒し時の実用性を重視したと推測できる設計になっている。 一方のアルトは、1525mmという全高を確保(ミライースは1500mm)し、頭上まわりの広さはミライースを上回る。ホイールベースはアルトが2460mm、ミライースが2455mmで大差ないが、後席フットスペースも設計が新しいアルトに軍配が上がる。なお、両モデルともに後席は左右一体可倒式で、後席片側のみを倒すことはできない。3人乗車しながら長尺物や大きな荷物を積むことは不可となっている。 動力性能や走りのクオリティ、ドライバーの視界支援機能など装備の新しさや居住性など多くの面で新しさもあり上回るのがアルト。このクラスだけに価格も重視するポイントになるはずで、その点ではミライースがリードしている。あとは、使い方や予算などのニーズに合わせて選択したいところだ。
塚田 勝弘