兵庫県の内部告発問題を受け「公益通報者捜し」禁止へ、通報者への不利益な取り扱いには罰則
政府は、組織の不正などを告発した公益通報者に対し、解雇といった不利益な取り扱いをした企業などに刑事罰を科すため、来年1月召集の通常国会に公益通報者保護法改正案を提出する方針を固めた。兵庫県で内部告発を行った元幹部が懲戒処分された事案などを受け、公益通報制度の実効性を高める必要があると判断した。 【図表】政府が目指す「公益通報者保護法改正」のポイント
刑事罰は違反した法人などの組織と個人双方に科す方向で、罰則の程度は今後詰める。同法は通報者への不利益な取り扱いを禁じているが、違反時の罰則は設けられていなかった。
不利益な取り扱いは、解雇や懲戒処分などが対象となる。配置転換や嫌がらせは、通報との因果関係を客観的に判断することが難しいため、含めない方針だ。
同法は300人超の企業などに対し、内部通報窓口の設置や通報に対処する従事者の配置を義務づけており、これらの違反に対しても刑事罰を導入する。
通報者を特定する「通報者捜し」や、契約時などに公益通報を行わないことを約束させる「通報妨害行為」についても、禁止規定を新設する。
消費者庁が2023年に行ったアンケート調査では、内部通報者の17・2%が「通報を後悔している」と回答し、原因として「不利益な取り扱いを受けた」「通報を同僚に知られた」ことなどを挙げた。
兵庫県の斎藤元彦知事によるパワハラなどの疑惑を巡っては、県側が内部告発した元県幹部を特定して停職3か月の懲戒処分としたため、告発者の不利益な取り扱いを禁じた同法に違反するとの指摘が出た。保険金の不正請求が発覚した中古車販売大手・旧ビッグモーターでは、内部通報体制が未整備だったことも明らかになった。
同法改正については、消費者庁の「公益通報者保護制度検討会」(座長=山本隆司・東大教授)が、年内に刑事罰導入などの必要性を指摘する報告書を取りまとめる予定で、政府はそれを踏まえて改正に向けた準備を進める。来年2月に改正案を閣議決定し、通常国会に提出する段取りを描いている。