「物価が上がらなくても…」政府と日銀がひた隠す日本経済の「知ってはいけない真実」
「賃金と物価の好循環」をスローガンに掲げてきた日本政府と日銀。国民にとって賃金が上がることは当然歓迎だが、では物価が上がる必要は本当にあるのか? 前編記事『実は日本だけ…政府が「物価上昇」で「好景気になる」と喧伝する本当の理由』より続く。 【写真】ほとんどの日本人は海外旅行に行けなくなってしまった「悲しい現実」
国民は好循環を「望んでいない」
しかし、言葉は悪いが、「賃金と物価の好循環」は、デフレ脱却の失敗を隠すための隠れ蓑になったと言えそうだ。 しかも、隠れ蓑はいつまでも使えない。 物価が上がるようになったから賃金もようやく上がったのだと声高に叫んでも、物価が上がらなくて所得が増える方がありがたいに決まっている。国民のほとんどは物価が上がることを好ましくないと考えている。 日銀が行っている「生活意識に関するアンケート調査(2024年3月調査)」によると、全体の94.4%の人が「物価が上がった」と感じているが、そのうちの81.0%の人は、物価の上昇をどちらかと言えば「困ったことだ」と回答している。 当然の結果だ。物価が上がっているときに、賃金が上がったと喜ぶ労働者はいない。上がるのが当然であって、上がらなければ大変なだけだ。 国民は、物価が安定していて、所得が増える状況を望んでいる。しかし、「賃金と物価の好循環」を目指すということは、物価が上がっていないといけないことになる。国民が好循環を望んでいなくても、だ。 インフレで困っている国民に、物価が上昇したおかげで賃金が上がったのだと、デフレ脱却のスローガンの正しさを説いても心に響かない。しかし、日銀はどうしても物価が上がることは良いこととしたいようだ。
アンケートの質問にも問題が
「生活意識に関するアンケート調査」の中では、「物価と収入がともに緩やかに上昇する状態」と「物価と収入がともにほとんど変動しない状態」とどちらが好ましいかという質問をしている。結果は49.3%の人が上昇している方が好ましいと答え、18.0%が変動しない状態が好ましいと答えている。残りは「どちらの状態でも変わらない」が19.7%、「わからない」が11.8%となっている。 この結果をもって、世の中の半分近くは賃金と物価の好循環を支持しているということにはならない。同じアンケート調査で全体の4分の3の人が、物価上昇は困ったことだと答えていることを忘れてはいけない。 つまり、質問の仕方が乱暴すぎる。国民の多くが期待するはずの「収入が緩やかに上昇し、物価がほとんど変動しない状態」が含まれていない。もしこの選択肢が含まれていたら、ほとんどの人がそれを選んだはずだ。 物価と所得は連動するという考え方を前提にして、二つの選択肢からどちらか選べと言われたら、物価上昇を好ましくないと考えている人はどうしたらよいのか。どちらも実質所得は同じだと冷静に考える人は、「どちらの状態でも変わらない」と答えたかもしれない。 しかし、物価が上がるのは困ったことだが、しかたなく所得が上昇している回答を選んだ人が多かったはずだ。