フランス格付け見通し「ネガティブ」に、財政赤字拡大-フィッチ
(ブルームバーグ): 格付け会社フィッチ・レーティングスは11日、フランスの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げると発表した。仏政府は2025年度予算案を前日公表したばかりで、急速な財政悪化に対処するバルニエ首相の取り組みに対して早くも厳しい判断が下された。
フィッチは昨年4月にフランスの格付けを「AA」から「AA-」に引き下げていた。今回、格付け自体は「AA-」に維持した。
フィッチは発表文で、「前回のレビュー以降、財政政策リスクは高まった」と分析。「今年の財政状況が計画から逸脱するとの見通しはフランスをより悪い財政のスタート位置に追い込むものだ。財政赤字が拡大し、28年までに政府債務が対国内総生産(GDP)比118.5%へと急拡大するとわれわれは見込んでいる」と説明した。
フランスの信用力に関する今回の警告は、同国の財政課題の根深さを浮き彫りにしている。低調な税収で予算不足が生じ、マクロン大統領が国民議会(下院)の解散を決断したことで、数カ月に及ぶ政治の不確実性と政策の停滞がもたらされ、24年に状況が急速に悪化した。
こうした事態は投資家にフランス国債の売りを促し、対ドイツ10年債プレミアムは今年前半の50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)弱から80bp近くまで拡大した。
フランス政府は10日、600億ユーロ(約9兆8000億円)規模の支出削減と増税により、財政赤字を今年の見通しである対GDP比6.1%から5%に抑える25年度予算案を発表。当初は24年に財政赤字4.4%を目標としていた。
フィッチは25年と26年の財政赤字が対GDP比5.4%になると予測。29年までに財政赤字を欧州連合(EU)の上限である3%以内に抑えるという政府の公約が達成されるとは見込んでいないとした。
アルマン経済・財務相は11日夜、フィッチによる今回の判断について「われわれがまさに示した25年度予算案は財政の軌道を修正し、債務をコントロールするという政府の決意を反映している」とコメントした。