見た目は「やっちまった感」が拭えない! アジアじゃ人気も日本じゃ不人気車まっしぐらだったフィットのセダン版「アリア」とは
やっぱり日本市場でセダンは刺さらなかった
パワーユニットは4気筒の1.3リッター(86馬力、12.1kg-m)と1.5リッター(90馬力、13.4kg-m)を用意し、ミッションはホンダマルチマチックS(CVT)を組み合わせる。駆動方式はFFのほか、デュアルポンプ式4WDも用意していた。 足まわりは初代フィットの初期モデルのキビキビした走り、乗り心地の硬さを改め、スプリングレート、ダンパー減衰力などを専用に最適チューニングして乗り心地重視のセッティングに変更。1.5リッターモデルには7スピードモード(ステアシフト)を設定。7速オートシフトモード、7速マニュアルシフトモードと3つの走行モードが楽しめたのだ。その走りはフィットの乗り心地をゆったりマイルドにした感じで、車内の静かさもまずまずだったと記憶する。 当時の新車価格は1.3リッターエンジン搭載の1.3Aが119万8000円、1.5リッターエンジン搭載の1.5Wが139万8000円(FF)と、内容を考えたらかなりリーズナブルだった。 とはいえ、東南アジアでは当時もセダン信仰があり、一定の評価を得たようだが(それでも現地では高価だった)、日本国内での評判はイマイチ。スタイリッシュな初代フィットをベースとしながら、セダン化のためにフィットより全高を40mm低め、全長を480mm伸ばし、車幅を15mm広くし、ホイールベース2450mmはフィットと同じというプロポーションは、いささかずんぐりしていて、フィットのエクステリアデザインの完成度とは別物だったのである。 筆者の知り合いの女性WEB敏腕編集者が、ボクに相談なく「アリア買っちゃった」と話したときは、心のなかで「マジかっ」と思ったものだが、要は不人気車で、当時の同種のライバルだったトヨタ・プラッツ(ヴィッツベースのコンパクトセダン)よりずいぶん安く買えたのが、アリアにしちゃった理由だったそう。 最初からコンパクトセダンを開発、デザインしていれば、アリアのようなカタチにはならなかったと思えるが、既存のコンパクトハッチバック車をベースにセダン化すると、ボディサイズの制約もあり、やはり無理すぎる……やっちまった……ということになる証明でもあったかも知れない。 3代目までのフィットや歴代オデッセイ、ステップワゴン、ストリーム、N-BOX、ヴェゼル、現行シビックなどのデザインはかなり優れているのにねぇ。
青山尚暉