こうじ使う日本独自の「伝統的酒造り」ユネスコ評価…出遅れた焼酎の海外輸出「価値を説明しやすくなる」
酵母は一般的な焼酎用ではなく、清酒用を使い、蒸留も通常1回のところを全量2回蒸留する。手間暇をかけるのは「味の追求。うちの作る蒸留酒が世界的に見ても価値を持つことが重要。価値ある仕事でないと続いていかない」との思いからだ。
食中酒に力を入れており、売れ筋は2017年に発売した「クラフトマン多田」。海外の顧客も視野に入れ、食事と焼酎の「究極のペアリング体験」を掲げている。濃い料理に合う「キャンティブラウン」、塩や酸味を使った軽やかな料理に合う「スパニッシュオレンジ」の2種類がある。
16億円にとどまる焼酎の輸出額
「酒造り」が世界的に価値を認められたことで認知度が高まり、海外への販路拡大に期待がかかるが、財務省の統計では、2023年の種類の輸出額は、清酒(日本酒)が約410億円なのに対し、焼酎は約16億円にとどまる。
多田さんは「日本酒よりも出遅れたが、どういう酒か、歴史や文化を含めて価値を説明しやすくなるし、胸を張って商売できる根拠となる。ブランド力向上につなげたい」と語る。
「今の場所に立ち止まる仕事ではなく、時代時代に合わせて、変わっていくのが本格焼酎の伝統だと思う。どんなものが出てくるのか楽しみだし、僕も生み出そうとしています」
◆無形文化遺産=世界文化遺産が建物や遺跡など形のある文化遺産を保護するのに対し、芸能、儀式、工芸技術など形のない文化遺産の保護を目的とした制度。日本では「能楽」「歌舞伎」「和食」「和紙」などが登録されており、「伝統的酒造り」が登録されれば、23件目となる。