みちのく異色右腕の151キロにスカウト垂涎
全日本大学野球選手権が8日、東京ドーム、神宮球場で開幕。巨人と阪神ら数球団がドラフト1位候補にリストアップしていると言われる変則右腕・熊原健人(仙台大4年)が東京ドームで行われた九産大戦に先発したが、自責点は1で13三振を奪いながらも、守備の乱れもあって6安打3失点の内容で、0-3の完封負けを喫して初戦で姿を消すことになった──。 それでもネット裏のスカウトの評価は下がるどころかアップしていた。 ヤクルトの松井編成部長は「最初の12人で消える素材だろう」と語り、またパ・リーグのあるスカウトは「率直に言って真っ直ぐがよかったし、スライダーはじめ変化球もよかった。ともに空振りが取れるし、球質もよかった」と、高く評価した。 初回には、直球が高めに大きく抜ける捕逸(記録上)で1死三塁のピンチを背負った直後。外角のボール球ながら、スカウトのスピードガンでは自己最速にあと1キロに迫る151キロを計測。居並ぶ12球団のスカウトを驚愕させた。4回は、直球に「今春、精度とキレが増した」と熊原が進化に手ごたえを感じていたスライダーを効果的に織り交ぜて、3者連続三振。 熊原は試合終盤になっても「真っ直ぐは自分の持ち味」と自負した通りの球威を維持。球速もスピードが出づらいとされている東京ドームにおいて、コンスタントに140台後半をマーク。9回にはアウト3つを全て空振り三振に仕留めるなど、計13奪三振で"ドラ1候補"としての片鱗は、キッチリと見せつけた。 阪神の葛西スカウトは、今日の熊原の投球をこう評価する。 「140キロ後半のストレートを、ゲームの終盤になっても常時出せるのが魅力。春季リーグ戦の東北福祉大戦では、完封して、中1日で、また完封していた。上背はないが馬力はありますね」 左足を大きく開いて構える変則フォームからバネ仕掛けのように左足をはねあげて投げる独特のフォーム。クイックモーションなどが心配されたが、スカウトのストップウォッチは「1.1秒台」。1.2秒台以下が合格点だから、そういう技術の不安もない。 また、もう一人のみちのくのドラフト1位候補、富士大の多和田真三郎は、東農大北海道オホーツク戦での登板が回避された。「リーグ戦の最終戦で、右肩と背中に違和感があった。今は痛みは特にない。全体的に調子が上がってこないので、先発を外れたのも当然だと思う。ただ、投げようと思えば投げられる状態なので、ブルペンで準備はしていた」とは、多和田の説明。多和田が故障で投げないまま、全国の舞台から消えたことでなおさら各球団の熊原評も高くなった。