「ビジネスモデルが分かる時点で新しくない」PRアワードでグランプリを受賞した、不動産業界の風雲児
「新規事業は分からないことをやるから新しいわけであって、ビジネスモデルが分かるということは新しくないんですよね」 【全画像をみる】「ビジネスモデルが分かる時点で新しくない」PRアワードでグランプリを受賞した、不動産業界の風雲児 そう語るのは、ウェブサービスや空間プロデュースなどを手がける株式会社On-Co(オンコ)の代表、水谷岳史(たけふみ)。 PR大賞を始め、数々の賞を受賞したウェブサービスのトップページには、「能登半島地震の長期支援するための広域支援拠点を作りたい!」「“餃子愛”に触れてもらえるお店を作りたい!」など300人以上の「やりたい思い」が並ぶ。 一見クラウドファンディングのサイトのようだが、実は「不動産マッチングサイト」。 空き家を借りて何かをやってみたい人が情報を掲載して、貸したい相手を大家さんが選ぶという、一般的な不動産サイトとは「さかさま」のウェブサービスだ。しかも、利用料も仲介手数料も取らない。
「空き家の情報は公開したくない」逆手に取る
高齢化の影響を受け、空き家は全国的に増え続けている。総務省の「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計」によると、2023年には空き家数が900万戸、空き家率が13.8%と過去最高となった。 一方、国交省の「空き地等に関する所有者アンケート」では、所有している土地の売却・賃貸等のために情報を提供することについて、「広く一般に提供してもよい(不動産仲介業への情報提供等)」と答えた人は15.6%にとどまっている。 つまり、空き家を所有・管理していても、その情報を公開したくないと考えている人が大多数なのが現状だ。 その心情を上手く捉えたのが冒頭の「さかさま不動産」。その仕組みはこうだ。 まず、借りたい人は公式LINE上で物件を探している都道府県と市町村を登録し、自身のやりたい思いを専用フォームに入力する。その後さかさま不動産からのインタビューを経て、サイトに掲載される。 一方、貸したい人はサイト上で借主を探せるほか、LINEで所有・管理している物件について登録しておくことも可能だ。登録する情報は、物件がある都道府県と市町村だけ。 登録したエリアで借りたい人が現れたら、お知らせが来る仕組みになっている。借りたい人と貸したい人の条件が合えば、晴れてマッチングが成立する。 登録の手続きは全てLINE上で行うことができ、心理的なハードルも低い。空き家の情報を詳細に公開しなくても借主を探せるのが、さかさま不動産の大きな強みだ。 さかさま不動産は2019年のサービス開始以来、その斬新なシステムが各所で高い評価を得てきた。「第1回まちづくりアワード」では特別賞、「PRアワードグランプリ」ではグランプリを受賞するなど、数々の賞を受賞している。 しかし、最初から明確なビジネスモデルがあったわけではないという。 「さかさま不動産を始めた頃、いろいろな人に『ビジネスモデルがなかったら続かへんで』と言われるので、そういう人たちには心の中で『勝手にやるって言っているんだから応援してくれてもええやん』と思っていましたね」 ビジネスモデルがなかっただけではない。水谷は、元から空き家の活用に関心があったわけではないと話す。ではなぜ、空き家を扱うサービスを開始したのだろうか。