箱根駅伝予選会は大波乱!古豪・筑波大の劇的復活と名門・山梨学院大陥落の理由とは?
2~4位は50回以上の出場を誇る神奈川大、日体大、明大が入り、5位は創価大で3年ぶり3回目の出場を決めた。創価大は今年2月から実業団のトヨタ紡織で監督を務めた榎木和貴監督が就任。中大時代に箱根駅伝で4年連続の区間賞という偉業を達成した指揮官のもとでチームは変わり始めた。 日々のトレーニングには、「ガーミン」というブランドのGPSランニングウォッチを活用。選手全員がアプリでグループ登録しており、そのデータも共有している。月間走行距離は「750km以上」を目標に掲げて、夏合宿では例年以上の距離を走り込んだ。 1万m27分台のケニア人留学生、ムソニ・ムイル(4年)は個人総合61位に終わったが、米満怜(4年)が個人総合7位(日本人3位)に入るなど、日本人選手が奮起。本戦ではムイルと米満を軸にシード権争いに加わりそうだ。 そして、「6位、筑波大学」のアナウンスに会場の空気が一変した。正直、ノーマークといえる大学だったからだ。筑波大は第1回箱根駅伝の優勝校(当時は東京高等師範)だが、予選会の成績は前回が17位で前々回が19位、その前は10年以上も20位以下という成績が続いていた。今季は6月の全日本大学駅伝関東学連推薦選考会(シード校と推薦校の10校以外の20校が出場した)に参戦できず、その後は4年生を中心に10人ほどの選手がトラックに専念。長距離チームは二分することになり、戦力的にはダウンしたはずだった。 しかし、この危機的な状況が箱根を目指す者たちを一致団結させる。夏合宿で充実したトレーニングを積み上げて、一気に予選会を突破したのだ。4年生で唯一チームに残った金丸逸樹が個人13位に食い込む大健闘を見せた。 筑波大OBで元五輪ランナーの妻・晴美さんのコーチを務めた弘山勉監督が2015年に就任。筑波大には体育専門学群があるため施設は充実しているが、大学からの強化費はゼロだという。そのため2016年からクラウドファンディングを開始。総額1200万円ほどを集めて、夏合宿などの予算に充てた。 長距離の寮はあるが、強豪校のように陸上部専用の建物ではなく、大学が借りた数部屋を14名(定員)でシェアしている。スポーツ推薦もあるが、近年は授業料免除だけでなく、奨学金を出している大学も多い。授業料の安い国立大のブランド校とはいえ、スカウティングも厳しい状況が続いていた。活動資金が潤沢にある私立大とはまったく違う状況にある。それでも超難関を久しぶりに突破した。 箱根駅伝は26年ぶりの出場となるが、前回は第70回記念大会だった。平成での出場はこの1回のみ。通常開催の出場は弘山監督が出場した昭和64年の第65回大会まで遡らないといけない。平成で不遇な時代を過ごした古豪が、令和の時代に返り咲くことになる。