緊迫する北朝鮮情勢(下)何が起こり得るのか? 着地点はどこに
北朝鮮をめぐる情勢がにわかに緊迫化しています。アメリカは北朝鮮に非核化を求めてきた過去の政策を「失敗だった」と総括。原子力空母「カール・ビンソン」を朝鮮半島近海に派遣し、今月末に到着する見通しです。北朝鮮は16日にミサイル発射に失敗しましたが、引き続きミサイル発射と6回目の核実験が行われる可能性があります。これまでの対北朝鮮政策を転換した米トランプ政権の「本気度」と金正恩政権の今後の対応をどう見るか。元航空自衛隊幹部の数多久遠氏に2回に分けて寄稿してもらいました。 【写真】緊迫する北朝鮮情勢(上)アメリカはどこまで「本気」なのか?
考えられる米国の具体的行動
前編では、軍事作戦において明確に弁別すべき「目的」と「目標」に焦点を当て、アメリカ(トランプ大統領)の意図を分析しました。トランプ大統領は強面のイメージを振りまいていますが、アメリカの目的は、従来と同様に、北朝鮮による核とミサイル開発の鈍化から変わっていません。後編となる今回は、もう少し具体的に、何が起こる可能性があるのか、見てみたいと思います。 では、核及びミサイル実験を繰り返す北朝鮮に対し、アメリカは何を行う可能性があるでしょうか。 発射されたミサイルの迎撃は、実験の妨害にはなりますが、直接に北朝鮮に被害を与える攻撃ではありません。北朝鮮としても、エスカレーションを招かない小規模な反撃を行うことで面子を保つことができます。 関連施設へのミサイル攻撃・空爆は、施設の重要性と性格によって、大きく変わりそうです。ミサイル関連施設に対しては、攻撃がありうるかも知れません。 核関連施設への攻撃は、予想外の被害、つまり核汚染の拡大が発生する恐れがあります。攻撃が原因となって、茨城県の東海村で発生したような臨界事故のような核事故が発生しないとは言えません。その上、この可能性は、逆に北朝鮮に利用される可能性があります。つまりアメリカによる攻撃後、北朝鮮が意図的に核物質をばらまき、アメリカの攻撃によって核汚染が発生したと宣伝する可能性です。浮遊性の高い微小核物質を偏西風に乗せ、韓国や日本に向けて流す可能性は、十分に考えられるでしょう。 弾道ミサイルの迎撃、あるいはミサイル関連施設への空爆などに対して、北朝鮮は、迎撃されることを承知で、アメリカ軍艦船あるいは航空機に対してミサイル攻撃を行ったり、日韓の近海に着弾するミサイルを発射したりするかもしれません。この程度の反撃であれば、アメリカもそれ以上の反撃は行わず、矛を収めるでしょう。