携帯電話業界の「料金競争」が新たな局面へ、ドコモ、KDDI、ソフトバンクのサブブランドが“通信容量”の拡大でしのぎを削る
現在の各社30GB帯プランの価格比較: - ahamo(ドコモ・オンライン):2970円 - UQ mobile(au・実店舗):3278円(33GB利用可) - povo(au・オンライン):2200円(年間契約時) - LINEMO(ソフトバンク・オンライン):2970円 - ワイモバイル(ソフトバンク・実店舗):2178円~(各種割引適用時) ■MVNOにも影響大か この競争環境の変化は、MVNO各社の戦略にも大きな影響を及ぼしている。
MVNOのHISモバイルは9月5日の発表会で、従来提供していた50GBプランの廃止を決定した。同社は30GBで3000円という価格帯を競争の主軸に据え、大容量ユーザーの増加によるネットワークへの負荷を抑制する方針を打ち出した。代わりに旅行関連の特典を充実させるなど、グループの強みを活かした独自路線での差別化を図ろうとしていた。 しかし、その直後にahamoが月額料金を据え置きながら、データ容量を20GBから30GBに拡大すると発表。HISモバイルの想定した競争環境は、わずか1週間で大きく変化する。
これに対しMVNOの日本通信は、ahamoの発表から6日後となる9月18日、月額2178円で50GB+5分かけ放題が利用できる「合理的50GBプラン」の提供を発表。これまでMVNOが主戦場としてきた3000円以下の価格帯で、サブブランドを上回る大容量プランを投入することで、キャリア系サービスの攻勢に対抗する姿勢を明確にした。 ■価格競争は新たな局面へ 「日本の携帯電話料金は高い。今より4割程度下げる余地がある」。2018年、当時官房長官だった菅義偉氏のこの発言は、携帯電話料金を巡る競争環境を大きく変えるきっかけとなった。
政権交代を経て首相となった菅氏の要請に応える形で、大手キャリアはサブブランドという形で月額2000円台後半の料金プランを投入。20GBで月額3000円前後という価格水準が、携帯料金の新たな目安として定着していった。 そして今、その流れは新たな段階を迎えている。大手キャリアは自社のサブブランドを通じて、同じ価格帯で30GBという新たな容量基準を打ち出し始めた。この動きは、従来MVNOが主戦場としてきた価格帯を直撃する。
MVNOの選択は2つに分かれる。日本通信のように、より大きな容量で対抗するか。それともHISモバイルのように、独自の付加価値による差別化を選ぶか。政策を起点とした価格競争は、携帯電話市場の構造そのものを変えようとしている。
石井 徹 :モバイル・ITライター