ライバル候補者の街頭演説に突撃…爆音で音楽を流す“選挙妨害行為”が法的に制止できず、警告に留まる理由
妨害の線引きは「かなり難しい」
筆者は約20年間にわたって、国政・地方を問わず取材してきました。それら選挙取材経験に照らしてみると、これまでの選挙でも “妨害”する行為は大なり小なり見られました。 なかには公職選挙法スレスレの巧妙な妨害をする陣営の動きも見ています。また、政党や政治団体の支援を受けていない独力で戦っている候補者に対して、政党や政治団体の力を駆使して邪魔をする陣営は想像以上に多いです。 そうした行為に対して、どこまでが妨害にならず、どこからが妨害になるのか? その線引きする判断はかなり難しいものがあります。 例えば、2019年の参議院議員選挙では安倍晋三元首相が北海道の札幌駅前で応援演説をしていましたが、その演説に対して2人が野次を飛ばしています。野次を飛ばした2人は、周囲の警察官に排除されています。この野次は“表現の自由”の範囲内であるとされ、排除した北海道警の行為は違法との判決が出ています。
街頭演説に足を運んだだけで犯罪者に?
こうした野次と拡声器を使った大音量の行動を同列に論じることはできませんが、どこまでが大音量の範囲になるのかは、個々の感性によるところが大きく、簡単に線引きができません。また、大音量での応援は許される行為なのに、大音量での批判はNGとなると、応援と批判の線引きもしなければなりません。それが難しいことは言うまでもないでしょう。 選挙取材をしていると、たまたま通りがかった人が大きな声を出して候補者を罵倒することは珍しくありません。それら全員を選挙妨害として罰することは非現実的です。 仮に罰することが可能になれば、立候補者が気に食わない人物を恣意的に排除できるようになってしまいます。最悪の場合、街頭演説に足を運んだだけで、犯罪者に仕立て上げることを可能にしてしまうのです。 もちろんそんな事態が簡単に起こり得るわけはありません。しかし、法的に可能ならば、それを悪用する人が出てくることも想定しておかなければなりません。 仮に公職選挙法を改正して妨害行為を明確化しても、それに触れない範囲で“妨害”が繰り返されるだけなのです。