センバツ高校野球 浦学、初戦飾る 強打で援護、力投の宮城 /埼玉
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)は19日開幕し、7年ぶり11回目出場の浦和学院は開幕戦で、初出場の大分舞鶴(大分)を4―0で降した。2021年秋に就任した森大監督率いる「新生・浦和学院」としての甲子園初勝利。ナインは大会第6日第2試合(24日午前11時半開始予定)、和歌山東(和歌山)との2回戦に臨む。【平本絢子、三沢邦彦】 試合が動いたのは四回。先頭打者の金田が中前打で出塁し、続く打席は4番・鍋倉。三回まで連打が出ない中、森監督から「三振でもいいから自分のスイングで打ちに行け」と言われたという。初球をコンパクトに振り、フェンス直撃の適時三塁打。「外の真っすぐと分かっていたのでセンターに打ち返した」(鍋倉)。金田が生還し、待望の先制点となった。 宮崎市の実家から駆け付けた鍋倉の母、由紀さん(44)は「第1打席は三振だったので、打てて安心した」と笑顔。鍋倉が小学校時代に在籍したソフトボールチームの日高雅司監督(44)もライトスタンドから見守り「成長を感じる。仕事を休んで来たかいがありました」と声を弾ませた。 続く高山は、4球目の変化球を振り抜き、大きく弧を描いた打球はバックスクリーン前に伸び、大会第1号の2点本塁打となった。母の理恵さん(49)=福岡市=は「ただびっくり。本当に良かった」。四回裏に計3点を挙げ、エース宮城を援護した。 五回裏にも、八谷の内野安打、金田の左中間越え適時二塁打で追加点。金田はこの試合4打数3安打で「長打力と確率を上げる冬の練習の成果が出た」と手応えを感じた様子。父の一則さん(51)=川口市=は「守備でも打撃でもよい所が出ていた」と頰を緩めた。 21年夏の甲子園でも登板した左腕エース宮城は、13奪三振、被安打2で完封。「初戦だったのでバランスを意識し、変化球と真っすぐで緩急をつけられたのが良かった」と振り返り、「まだまだ、ここから修正することが見つかった」と次の試合に気持ちを向けていた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇祖母へ「本塁打打てたよ」 浦和学院・高山維月捕手・3年 「バックスクリーンにホームランを打つから見ててね」。試合前日、大分県中津市に住む祖母に電話で約束した。 3人兄弟で全員が球児。21年夏の甲子園でもベンチ入りし、夢を果たせなかった兄2人の分もと気負って挑んだが、2打数2三振に終わった。「悔しい結果だった。自分のプレーを見せられず、ふがいない」 新チームでは主軸を担い、同年秋の関東大会ではチーム唯一の本塁打を放った。「次はおばあちゃんに(テレビ中継される)試合で打つところを見てもらいたい」 この日は、両親と2番目の兄由詠(ゆうた)さん(19)がスタンドから応援する前で、甘く入った変化球を持ち味のフルスイングで仕留めた。大会第1号の2ラン。「外野に(飛ばそう)という意識で振った結果」と喜び「緊張でただ(ダイヤモンドを)走ってしまった。もっとゆっくり走りたかった」と振り返る。テレビ観戦しているはずという祖母に「打てたよ、と一言かけたい」とはにかんだ。【平本絢子】 ……………………………………………………………………………………………………… ◇球春告げるアナウンス 「大会関われて幸せ」 浦和第一女子高・下崎さん 開会式では、県立浦和第一女子高を16日に卒業した下崎日菜乃さん(18)が入場行進の司会を務めた=写真・望月亮一撮影。三塁側ベンチ前に設置されたマイクに向かい、出場32校の校名や出場歴を大舞台の開幕にふさわしい明るい声でアナウンス。球春の到来を告げた。 「選手の皆さんの誇らしい気持ちを声に乗せました」。下崎さんは同高アナウンス部長だった21年7月、NHK杯全国高校放送コンテストのアナウンス部門で全国優勝。Nコンを最後に部活動を引退し、司会に選ばれた時は受験勉強の真っ最中だった。驚いて、しまい込んだ練習メニューを引っ張り出し、発声練習を再開したという。 新型コロナウイルスの影響で声を出す活動が制限され、Nコン全国大会もデータ審査だったため、人前に立つ久しぶりの舞台が甲子園。「球場に足を踏み入れた瞬間、感動して泣きそうになった。なんとか気持ちを静めました」。高校生として最後のアナウンスを終え「ほっとして、さみしい気持ち。この大会に関われて幸せに思う」と笑顔を見せた。【岡礼子】 ……………………………………………………………………………………………………… ◇初戦を前に堂々と行進 開会式 初戦に先立つ開会式で、浦和学院ナインは堂々と入場行進した=写真・滝川大貴撮影。滑川総合高書道部が揮毫(きごう)したプラカードを掲げた補助員の綿引健将選手(3年)、センバツ旗を手にした八谷晟歩主将(同)に続き、選手たちは引き締まった表情で大きく腕を振り、甲子園の土を踏みしめた。【平本絢子】