乗客減のローカル線、魅力はこう磨く!廃線から劇的復活「ホームで乾杯」「両側乗降」イタリアの鉄道に学ぶ先行投資
イタリア最北部の山間部を走るフィンシュガウ鉄道は、乗客低迷に伴い1991年に廃線。その後、考え得るテコ入れを総動員して2005年に運行再開すると、廃線直前のおよそ27倍となる約7400人の乗客が利用するまでの大復活を遂げた。前編では、新型車の導入や鉄道・バスの乗り継ぎにかかわる工夫を紹介した。打った手はまだまだある。中編では、鉄道を利用したくなる魅力と利便性アップの取り組みや、組織構造の改変について、詳しく解説する。 【写真】ちょっとの工夫で「駅前勢」が拡大…両側にホームのあるナトゥーンス駅 (柴山多佳児:ウィーン工科大学交通研究所 上席研究員) ■ 出入り自由のホームでビールを1杯 フィンシュガウ鉄道の駅にはほかにも、駅への自由な出入りを上手に使った工夫がある。 一つはショートカットになる出入り口を多くの駅で設置したことである。改札がないのでホームにつながる地下通路をそのまま伸ばして駅裏に直接出られるようにするなどはまだ序の口。 駅舎を経ると町の中心までぐるりと回ることになるナトゥーンス駅では、1本の線路の両側にホームを設置して、駅舎側のホームはバスの発着場所に直結して乗り換え客の利便性を図りながら、線路の反対側に増設したホームは近くの橋に直結して川向いの町の中心へのショートカットとしている。 列車が到着すると左右両側の扉が開くので、乗客はどちらからでも乗降できる。町に出たい乗客は増設された川側のホームから直接橋を渡れるので、距離が短いだけでなく、踏切待ちも必要ない。 駅舎はなるべく開業当初の意匠を復元して、駅ごとのオリジナリティが出るようにした。さらに駅舎の所有権を立地する市町村に移転して、地元で自由に利用できるようにした。観光案内所のようなよくある使い方をする自治体もあったが、カフェやレストランを入居させて住民が集う場所とした自治体も多い。 ホームに自由に出入りできるので、ホーム側にテラス席を設けてアルプスの山並みと、時々やってくる列車を眺めながら、イタリアンコーヒーや地元のビールを1杯、などといったことができる。