スターマー新首相が組閣に着手…イギリス総選挙、労働党が勝利「政治への敬意を取り戻す」
【ロンドン=蒔田一彦】英下院(定数650)の総選挙が4日、投開票され、労働党が410議席以上を獲得する地滑り的勝利を収めた。キア・スターマー党首は5日、新首相に就任し、2010年以来14年ぶりに労働党政権が誕生した。リシ・スナク前首相が党首を務める保守党は議席を解散前の半数以下に減らし、歴史的な大敗を喫した。
スターマー氏は5日午後、バッキンガム宮殿でチャールズ国王から首相に任命された後、首相官邸前で演説した。スターマー氏は「労働党に投票した人も、そうでない人にも『私の政府は皆さんのために奉仕する』と言いたい。我々は変化をもたらし、政治への敬意を取り戻す」と宣言した。
スターマー氏は組閣にも着手した。英BBCによると、外相にはデビッド・ラミー氏が任命された。
これに先立ちスナク氏も演説し、「国民の皆さんにおわびを言いたい」などと述べた。保守党の党首を辞任する意向も示した。
BBCによると、日本時間6日午前0時の時点で、労働党は解散前の206議席から倍増し、412議席を獲得した。トニー・ブレア氏が党首として臨んだ1997年総選挙の418議席に匹敵する大勝となった。
解散前345議席だった保守党は121議席で、1918年以降の総選挙で最少だった97年の165議席を下回った。リズ・トラス元首相やグラント・シャップス国防相らが落選した。
スターマー氏は労働党が大敗を喫した2019年の前回選後に党首に就任し、現実路線を打ち出して党の立て直しを図り、政権交代の必要性を訴える主張が受け入れられた。不祥事などで首相交代が相次ぎ、信頼を失った保守党には、長引く経済低迷や物価高騰、移民の増加に対する不満も向けられた。
英国の欧州連合(EU)離脱運動を推進したEU離脱党が前身の反移民政党・改革党は4議席を獲得し、党首のナイジェル・ファラージ氏が初当選した。中道派の自由民主党は解散前の15議席から大幅に議席を増やした。保守党に不満を抱く保守票が両党に流れたとみられる。
キア・スターマー氏 Keir Starmer 主に人権問題を扱う法廷弁護士を約20年務めた後、2008~13年に英検察局長官。15年に下院に初当選し、20年4月、労働党の党首に就任した。英南部サリー州で育った。英リーズ大卒、61歳。