街を彩った芸者文化 山形の渡辺さん、赤湯温泉「色街アワー」出版
戦後の南陽市赤湯温泉を舞台に、芸者文化や温泉街の活況ぶりを生活者の視点で振り返る「色街(いろまち)アワー」が出版される。作家で料理店経営の渡辺大輔さん(44)=山形市小姓町=が執筆し、南陽市三間通の角田弘子さん(82)が2002年にまとめた手記が原作だ。渡辺さんは、来年が戦後80年となることを踏まえ「赤湯の“郷土史”のような一冊になれば幸い」と話す。 渡辺さんは19年、角田さんは04年に本紙日曜随想の筆者を務めた。原作となった角田さんの手記は「遠花火(とおはなび)」。芸者を抱える置き屋が数多くあった赤湯の温泉街に暮らした。幼くして父親を亡くし、母親と懸命に生きた日々を題材としている。渡辺さんが遠花火を手にしたことをきっかけに、当時の時代背景を調べるなどして再構成した。 家が貧しく、芸者として生活するために赤湯に来た少女が同学年にいた。赤湯では珍しいことではなかったが、「芸者にはなりたくない」と脱走したことがあった。子どもたちのままごとでは芸者用語が使われるほど、芸者文化は生活に浸透していた。
お座敷へと向かう芸者がげたを鳴らし、旅館からは三味線や太鼓の音が響き渡った日々。角田さんは「日中の赤湯の雰囲気は今も昔も変わらない。ただ、夕方になると温泉客と芸者でにぎわっていた」と話す。戦後の赤湯を知る人が少なくなってきたからこそ、渡辺さん、角田さんともにこの一冊を通じて歴史を伝えたいとの思いを抱く。 13日に全国の書店に発送する。B6判208ページ。定価1760円。問い合わせは渡辺さん(合同会社傑作屋)023(665)4290。