ID@Xboxクリス・チャーラ氏インタビュー。この10年で3500タイトル以上をリリース。今後はデベロッパーの“発見”を助けることに力を入れたい【GDC 2024】
文・取材:古屋陽一 2024年3月20日~22日(現地時間)、アメリカ・サンフランシスコ モスコーニセンターにて、世界最大規模のゲームクリエイターのためのカンファレンスGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2024が開催。 【記事の画像(4枚)】を見る このGDC 2024に合わせて、マイクロソフト主催による“ID@Xbox Previews@GDC 2024”が3月19日に、モスコーニセンターからほど近くにあるバーVictory Hall & Parlorで行われた。GDCの開催期間中に、マイクロソフトが近辺の施設を借りて、ID@Xbox用タイトルを世界中のメディアにお披露目するのはすっかりおなじみ。ID@Xbox用タイトルのプロモーションの一環とも言える。 今回出展されたのは以下のタイトル。 『Dungeons of Hinterberg』 開発:Microbird Games 発売日:2024年第3四半期 ジャンル:アクション・アドベンチャー ※日本語対応あり ■『Dungeons of Hinterberg』Xboxサイト 『Echo Weaver』 開発:Moonlight Kids 発売日:未定 ジャンル:アクション ※日本語対応は現状ではない模様 ■『Echo Weaver』公式サイト 『Go-Go Town!』 開発:Prideful Sloth 発売日:2024年発売予定 ジャンル:シミュレーション ※日本語対応あり ■『Go-Go Town!』公式サイト 『InKonbini: One Store, Many Stories』 開発:永井興業 発売日:未定 ジャンル:アドベンチャー ※日本語対応あり ■永井興業公式サイト 『Luna Abyss』 開発:Bonsai Collective 発売日:未定 ジャンル:アクション ※日本語対応は現時点ではない模様 ■Bonsai Collective公式サイト 『Mythwrecked: Ambrosia Island』 開発:Polygon Treehouse 発売日:2024年第3四半期 ジャンル:アドベンチャー ※日本語対応あり ■『Mythwrecked: Ambrosia Island』公式サイト 『Shadow of the Ninja』(『闇の仕事人 KAGE Shadow of the Ninja』) 開発:ナツメアタリ 発売日:2024年夏 ジャンル:アクション ※日本語対応あり ■『闇の仕事人 KAGE Shadow of the Ninja』公式サイト 『Sonzai』 開発:2 Odd Diodes 発売日:未定 ジャンル:RPG ※日本語対応は現時点ではない模様 ■『Sonzai』Steamサイト 『The Sinking City 2』 開発:Frogwares 発売日:未定 ジャンル:アクション ※日本語対応あり ■『The Sinking City 2』Steamサイト 今回、“ID@Xbox Previews@GDC 2024”に合わせて、Xbox コンテンツ・キュレーション&プログラム担当ジェネラル・マネージャー クリス・チャーラ氏にお話をうかがうことができたので、その模様をお届けしよう。 ID@Xboxは数多くのヒット作に恵まれている ――ID@Xboxの最新の進捗をお話いただけるとのことで、ここ数年のID@Xboxの取り組みの手応えを教えてください。 クリス ファミ通さんと最後にお話したのは2019年だったかと思うのですが、それ以降もID@Xboxプログラムはとてもうまくいっています。トータルで、40億ドルの資金を支給して、3500以上のゲームを開発しています。1月には『パルワールド』のリリースもありましたが、とても好評でした。 ――注目タイトルも多数リリースされましたね。 クリス すごくたくさんあります! 『パルワールド』はXbox Game Passのサードパーティーのタイトルでは最大のヒットとなりました。さらには、『Cuphead』や『ARK: Survival Evolved(アーク:サバイバル エボルブド)』、『Brotato』、『Tunic』など……。私が個人的に遊んでいるゲームを思いつくままにピックアップしてみたのですが、ID@Xboxでは、とにかく多数のヒット作に恵まれています。 ――ID@Xboxは、国を問わず盛んということは言えそうですね。 クリス そうですね。アメリカ、イギリス、スペイン、日本、スウェーデン、カナダなどが挙げられます。それらの国は開発者が多いということもひとつの理由としてあるのですが、歴史的に見てゲームがとても盛んな国なので、大手の開発会社を去って、インディーゲームスタジオを設立するという流れができているのだと思います。 ――それだけ、ID@Xboxが受け入れられている理由はどこにあると思っていますか? クリス 今回のイベントにも代表されるように、プロモーションしやすいというのが、まずはあると思うのですが、いちばんはゲームをリリースしやすいということです。 ――他社プラットフォームと比較しても出しやすい印象ですか? クリス ほかのプラットフォームと比較して簡単かというのは言いかねるのですが、Xbox上でパブリッシングしやすいということはたしかです。私たちはつねに自分たちのことに専念して考えていますので、私たちは、「これがうまくいく」ということで考えて取り組んでいます。他社さんのことはわからないのですが、うまくいっているのではないでしょうか。 ――いま、インディーゲームが盛んですが、その盛り上がりの一端には寄与しているとの手応えは感じている? クリス 日本語でお答えすると、“スコシ”(笑)。たくさんのゲームを遊んでいただけるように取り組んでいるのですが、少しは寄与できているのではないかと思っています。 ――世界中のインディーゲームをユーザーに届けることは、大いに意義のあることと言えそうですね。 クリス そうですね。すばらしいゲームがありますから。私たちのユーザーさんに、そんなすばらしいゲームで遊んでいただきたいと思っています。 少し深くお答えさせていただくと、東京や横浜、コロンビア、南アフリカなど、私はいろいろなところに行きましたが、たとえば東京の何百、何千と本がある本屋さんに行っても、いっさい読めません。メキシコに行っても本を読むことはできません。それができなくても、ゲームでその国のカルチャーを体験することはできます。日本に行けなくても、観光地に行けなくても、本が読めなくても深くカルチャーに接することができる。そんなことができるので、インディーゲームクリエイターが開発したタイトルは価値があるのではないかと思っています。 ――ID@Xboxでは、いかにクリエイターに快適に開発をしてもらうかに取り組んできて、その成果は出ているということですね。 クリス そうですね。私たちは、ID@Xbox Developer Acceleration ProgramやXbox Game Campなどを通して、この10年デベロッパーに対して投資をしてきたのですが、結果はすばらしいものです。Developer Acceleration Programでは、十分な機会に恵まれない開発者に、Xbox用ゲームを開発する機会を提供してきたのですが、取り組みはグローバルに広がっていまして、たとえばインドやナイジェリアなどにも広がっています。 ――インドやナイジェリアのクリエイターも、Xbox向けのソフトを作っているのですね。 クリス いま100以上のXbox向けタイトルが、アフリカ、インド、東南アジアの開発者によりリリースされています。それらのデベロッパーが、アメリカや日本の会社とコラボするケースも増えています。 ――さきほどのお話にもありましたが、その国のカルチャーに触れられるゲームもリリースされていそうですね。 クリス そうですね。インド神話をモチーフにしたゲームもあったりするのですが、そういったものを見ると、私たちにはない文化を持っているなと思います。 ――インドにはたくさんの開発者がいるという認識はありましたが、ナイジェリアでもゲーム開発が盛んなのですね。 クリス 才能(タレント)ということで言うと、地域を問わずすべての場所にあります。たとえば、ナイジェリアにも才能を持った人は確実に存在します。ただ、国として、ゲームの歴史などがないので、それを見出す機会があまりないかもしれない。そういった意味で、私たちはその国ではなかなか出てこられないような才能を見つけるためのサポートができればと思っています。 ――東南アジアのクリエイターのタイトルは、徐々に認知が広がりつつありますね。 クリス そうですね。シンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナム、台湾などではものすごくいいタイトルがたくさんあって、それらの国ではモバイルのタイトルは多数リリースされているのですが、これからコンソールのゲーム向けにもがんばってほしいと思っています。先ほどもお話しましたが、才能というものはどの国にもあって、その国にもともとなかったコンソール用ゲームの開発に向けてのサポートをしていきたいと思っています。 ――今後、ID@Xboxで取り組んでいきたいことを教えてください。 クリス デベロッパーさんの“発見”を助けることに力を入れたいと思っています。どういうことかと言いますと、ストアにプレイヤーさんが来て、ゲームを見つけるという状況があって、それに対しては力を注いでいるのですが、これからは開発者がプレイヤーさんを見つける手助けができないかと思っています。 ――たとえばどのようなことですか? クリス RPGを買ったお客さんは、またRPGを作ったら遊んでくれるのではないか……そういったことを見つけて、「このお客様向けにこんなRPGを作ってみたらいいのでは」といったアドバイスができるようなことを考えています。 「こういったユーザーさんだったら、こんなゲームを楽しんでくれるのではないか」という、そういった“発見”を、クリエイターにもたらすことができるように、そんなサポートをしていきたいです。 ――クリエイターの志向を判断して、好まれる動向を教えるということですか? クリス そういうこともしています。「こういうゲームがよく売れているようです」とか、「市場はこっちのほうに向かっているようです」といったことをデベロッパーさんと共有していたりもするのですが、「RPGはこの層に好まれるので、この層に対してさらにアプローチしたらどうでしょう」ということも適宜やり取りしています。 ――ちなみに、クリスさんはいまのゲーム業界の動向をどのように分析していますか? クリス それがわかったらいいんですけどね(笑)。予想するのは難しいのですが、私は驚かされるのが好きなので、「このゲームがこんなに売れるとは思っていなかった」というのが、思ったよりも売れるとか。でも、実際にプレイしてみたらわかりますよね。 ――これまでID@Xbox向けに3500タイトル以上をリリースしたとのことですが、2023年は何タイトル発売したのですか? クリス 600以上ですね。今年も同じような数になるかと思います。 ――最後に、ユーザーに向けてのメッセージをお願いします。 クリス ID@Xboxにはとってもかっこいい、クールなゲームがたくさん出ておりますので、それを皆さんと共有できるのを楽しみにしています。 ※[2024年3月26日]一部数字の記載に誤りがありましたので、訂正させていただきました。
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