国士舘 車椅子でバット振り 黒沢孟朗内野手、けがから復帰 /東京
<第91回選抜高校野球> 第91回選抜高校野球大会(日本高野連、毎日新聞社主催)に出場する国士舘に、けがで約2カ月間チームを離れていた黒沢孟朗(たろう)内野手(1年)が復帰した。9日から始まった沖縄遠征にも合流。黒沢選手は「甲子園でまず1打席立てるように準備したい」と意欲を燃やす。 永田昌弘監督が「チーム屈指の長打力があり、あいつに回せば何とかなる」と期待する黒沢選手。昨秋の東京大会は1年生ながら4番に座り、決勝では貴重な先制適時打を放った。低く構えた独特のフォームが生み出す勝負強い打撃で、打率3割2分3厘、7打点の好成績を残した。 しかし、センバツ出場が有力視されていた今年1月12日、柔道寒稽古(げいこ)の授業で左足首脱臼骨折、靱帯(じんたい)損傷の大けがをした。全治3カ月の診断に、黒沢選手は「『終わった……』という気持ちでした」と振り返る。 翌日の手術でボルトを入れて、骨を固定した。「せっかく巡ってきた甲子園のチャンスを絶対に逃したくない」。専門的な治療を受けるために転院を決意し、わずかな望みにかけた。2回目の手術後は回復を早めるためギプスを付けず、永田監督も背番号「3」を空けて復帰を待った。 病院食に加え、父親が毎日持参してきた米2合分のおにぎりを食べて体重をキープ。車椅子に移ってバットを振り、ベッドでは守備のフォーメーションや野球に向き合う姿勢を学ぼうと、本を読みあさった。 2月上旬に早くも自力歩行の練習を始め、月末の退院後は石川県の実家で静養した。そして3月8日。チーム練習に復帰すると、打席に入ってフルスイングし「気持ちいいっすね」と繰り返した。 永田監督は「本人の中に恐怖感があるはず。まず代打要員から」と急がせない方針だが、大舞台を前にしたチームに心強い仲間が戻ってきたのは間違いない。黒沢選手は「急ぎながらも焦らず、遅れた分を取り返したい。甲子園で支えてくれた人に恩返しするプレーを見せたい」と晴れやかな表情で語った。【川村咲平】 〔都内版〕