映画『十一人の賊軍』は、臨場感抜群のアクション時代劇だ!──山田孝之&仲野太賀のダブル主演で11月1日劇場公開
山田孝之&仲野太賀がダブル主演する映画『十一人の賊軍』が、11月1日に劇場公開する。11人の“賊軍”が死闘に挑むアクション時代劇の見どころを、ライターのSYOがレビューする。 【写真を見る】⼭⽥孝之、仲野太賀、⽟⽊宏、阿部サダヲ、ゆりやんレトリィバァほか(全21枚)
山田孝之&仲野太賀がダブル主演
『仁義なき戦い』シリーズなどで知られる脚本家・笠原和夫が残したプロットを白石和彌監督ほか『孤狼の血』チームが映画化した『十一人の賊軍』が、11月1日に劇場公開を迎える。タイトルの通り、11人の“賊軍”が壮絶な死闘に身を投じるさまを活写するアクション時代劇だ。 妻を武士に蹂躙され、その報復に殺害したことで死罪を言い渡された政を演じるのは、山田孝之。そのほか尾上右近、鞘師里保、佐久本宝、千原せいじ、岡山天音、松浦祐也、一ノ瀬颯、小柳亮太、本山力といった10人が“賊軍”に扮した。彼らを率いて、戦場に赴く剣術道場の道場主・鷲尾兵士郎に扮したのは、仲野太賀。さらに、野村周平、音尾琢真、玉木宏、阿部サダヲといった豪華キャストが出演する。 極悪人たちがチームを結成し、さらなる悪党を討つ作戦に挑む──という構造自体は、ハーレイ・クイン他DCコミックのヴィランが集結した『スーサイド・スクワッド』『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』がイメージしやすいかもしれない。 また、様々な境遇を持つ猛者たちが砦を守るという意味では、山田孝之も出演した『十三人の刺客』(リメイク版)をも想起させる。山田孝之×仲野太賀という演技達者な面々と『孤狼の血』チームの座組も魅力的だ(山田と白石監督は『凶悪』以来のタッグ)。 本作の見せ場の一つは、つり橋でのアクション。実際に大掛かりな“雨降らし”を投入し、暴風雨で足場が悪いなかでの戦闘は、まさに命がけ。鑑賞中に思わずこぶしを握り締めてしまうほどの臨場感がある。白石監督らしい泥臭さを重視した画面作りは本格的で、かと思えば景気の良い爆発シーンもふんだんに収められており、終盤には一対多数の大立ち回りも用意される。 そもそも戦闘のプロでない罪人たちは技術もなく意識も低いため、いわゆる時代劇の王道である正面切った剣戟(けんげき)が成立しない点も興味深い。特に山田演じる政は隙あらば戦場から脱走して妻のもとに帰ろうとするし、切れ味鋭いアクションが収められているかと言ったらそうではない。映し出されるのはただただ最悪の状況を抜け出して家族のもとに戻ろうとする生々しい姿。大義に殉じようとする前述の『十三人の刺客』とは真反対の、何があっても生き延びようとする生への執着を見せつける。 戦闘のプロという役を担うのが、仲野太賀。生真面目な性格で、戦闘時も清廉潔白な振る舞いを見せる。仲野は本格的な殺陣は初挑戦のようだが、観る者が信頼できる正義の人としての存在感を随所に発揮した。その彼が終盤に見せる切った張ったの大活躍もまた、本作のハイライトだ。うがった見方だが、『十三人の刺客』で若武者を演じた山田から『十一人の賊軍』の仲野へ──事務所の先輩から後輩へのバトンにも感じられ、両者のファンとしてはこみ上げてくるものがあるのではないか。 タイトルにある「賊軍」が何を意味するのか。「勝てば官軍負ければ賊軍」の言葉がある通り、これは「純粋悪」を示すものではなく、権力側の正義によって敵=逆賊とされる者たちを指す言葉。何をもって賊となすのか、そして集められた10人の罪人たちに加わる「十一人目の賊軍」は誰なのか──そこに込められたメッセージにも注目したい。