「脂質を取らないと、痩せたはいいものの肌がボロボロに」 悪者扱いされる「あぶら」で長寿を目指す健康法とは
「オメガ3系が“良いあぶら”」という誤解
「魚介類やえごま油などのオメガ3系が“良いあぶら”である」 食への意識が高い人の中には、このような話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、実はこの認識は必ずしも正確とはいえません。 ともに必須脂肪酸であるオメガ3系とオメガ6系は「ライバル関係」にあります。ごく大雑把に言うと、オメガ3系は細胞膜を柔らかくし、オメガ6系は固くします。どちらに偏っても細胞膜は「膜」としての機能をうまく果たせなくなってしまうので、オメガ3系だけ取ればいいという話ではないのです。 では、オメガ3系とオメガ6系のバランスをどうすればいいのか。厚生労働省はその摂取比率が「1対4」であることを目安としていました。国際的な脂質研究の学会では「1対2」が理想であると考えられていますが、いきなり実現するのはハードルが高いので、まずは1対4を目指すので構わないでしょう。
デパ地下を観察すると…
とはいえ、1対4ですら高いハードルといえます。食の欧米化、魚食離れが進んだ結果、ひどい人だと「1対20」、なかには「1対50」の人もいるといわれているからです。 先ほど説明した「見えないあぶら」はまずオメガ6系と考えて間違いないでしょう。それほど、私たちの食生活はオメガ6系に囲まれているわけです。ごま油、大豆油、コーン油……。いわゆるサラダ油の原料となっているものは全てオメガ6系です。つまり、オメガ3系とオメガ6系のバランスが大事とはいうものの、よほど意識しなければ現代の日本人はオメガ6系を過剰摂取し、オメガ3系が足りないという事態に、“自動的”に陥ってしまう環境に置かれているのです。 例えばデパ地下の食料品・惣菜コーナーを改めて観察してみると、とんかつ、焼き鳥、唐揚げ、中華、サラダのドレッシング……といった具合に、「見えないあぶら」を使った商品がほとんどであることに驚かされます。 では、オメガ3系が不足するとどうなるのか。ごく単純に言うと、細胞膜が固くなってしまい、結果としてさまざまな体の不調がもたらされます。私たちの研究では、オメガ3系を積極的に摂取することによって、例えば成熟・壮年期には視覚機能の低下やサルコペニア、また糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞といった生活習慣病、老年期にかけては認知症等の予防に有用に働くことが分かっています。裏を返せば、オメガ3系が不足すると、これらの病気の罹患リスクが高まってしまうのです。