その家に80代まで住むことができますか?終の住処は60歳までに探すべき理由
2024年は日本の人口の約半分は50歳以上になるといわれ、少子高齢化は確実に進んでいます。 現役世代が減ることによる人手不足が懸念されていますが、その人手不足によって「おひとりさま」の高齢者へのケアが、今後ますます厳しくなることが予想されています。「おひとりさま」と言われると家族のいる人は、他人事のように感じるかもしれませんが、パートナーが認知症になったり、先に亡くなってしまったらどうでしょう? 子供がいても独立して家庭を持っていれば、簡単に頼ることもできません。 司法書士として高齢者のサポートを20年以上続けてきた太田垣章子さんは、いまや「1億総おひとりさま時代」だと警鐘を鳴らします。誰もが「おひとりさま」になり得る時代、人に迷惑をかけず、楽しく生き抜くための準備が必要なのです。動くのも考えるのも、億劫になる高齢者になってからでは遅いので、体力と気力がある、いまこそ準備の始め時。 そこで、今回は『あなたが独りで倒れて困ること30』(ポプラ社)から、終の住処についての考え方や探すべき時期をご紹介。70代80代になっても住み続けられる家を探すことが重要です。
人生100年時代。終の住処をいつ、どう考えればいいのでしょうか?
■60代を過ぎてからでは何もかもが遅すぎます 人は死ぬまで、どこかに住みます。それが持ち家なのか、賃貸なのか、高齢者の施設なのか、病院なのか……。選択肢はいろいろありますが、基本はどこかに住みます。一方で、自分が死んだ後、その住処は誰がどうしてくれるのでしょうか。そんなことを、考えたことがありますか? 子どもの人数が多かった昭和の頃、日本の家庭の象徴は『サザエさん』でした。 祖父母がいて、子どもがいて、三世代が賑やかに生活する、そんな時代がちょっと前まではありました。でも今は核家族化が進み、さらには離婚も増え、子どもはいるけど一緒に住んでいないとか、遠方に住んでいるとか、疎遠になっているとか、いろいろなパターンがあります。 ひとり世帯もたくさんいて、これからは自分のことは自分で対応する時代になってきています。 今、皆さんはおいくつですか? 今、住んでいる物件は、築何年ですか? 皆さんが80歳になった時、その物件は築何年になっているのでしょうか。 もし賃貸物件なら、木造や軽量鉄骨造りなど構造にもよりますが、40年を過ぎると建替えの検討も家主側で始まります。鉄筋コンクリート造りであっても、築60年を過ぎると、管理状態にもよりますが、建替えが頭をよぎる家主も多くなるでしょう。 70歳を超えると、なかなか部屋は貸してもらえません。ぎりぎり貸してくれるのは、60代の現役で働いている方々までです。 ご自身が今住んでいる物件は、あなたが亡くなるまで建替え等もなく住み続けることができるでしょうか? 高齢になって建替えで退去して欲しいと言われたら、行く先が本当になくなります。新居を探すのに苦戦します。貸してもらえるとしても、かなり古い物件です。だからまた立ち退きの話もあるかもしれません。 そうならないために、自分の年齢と物件の築年数を考えて、最期まで住み続けられない状況なら、現役世代中に長く住める部屋に引っ越しするのが得策です。 家主だって、ビジネスで賃貸経営をしているので、皆さんが住んでいるが故に建替えができないとなると、いろんな意味で経営が制約されてしまいます。借りるのであれば、やはり家主側のことも考えていただきたいなと思うのです。 もし持ち家の戸建てなら、皆さんが80歳になった時には、かなり老朽化した状態になっていませんか? 自分たちの年齢とともに建物自体も維持管理費にどんどんお金がかかるお年頃ではありますが、その分を予算組みしていますか? 現在の築年数にもよりますが、水回りのリフォームや、屋根、外壁の補修も必要になってくるかもしれません。そうなるとその分を予算組みしておかないと、修繕もできなくなってしまいます。 ただ古い戸建ては、修繕したとしても延々と手がかかる可能性もあります。そして使っていない部屋があるなら、不動産は生き物なので、老朽化も進みます。 もし使っていない部屋がたくさんある状況なら、終の住処をどうするか早めに考える必要があるのです。 そして人は「必ず」いつかは亡くなります。これだけは絶対です。 皆さんが賃貸物件に住んでいて、亡くなったらその部屋は誰が空っぽにして、家主に鍵を返却してくれるのでしょう。最後の家賃や原状回復義務は、誰が果たしてくれますか? ひとりで持ち家に住んでいるとしても、同様です。 その家の片付け、誰がしてくれますか? そしてどの方が相続するのでしょう。相続したとして、その家を使ってくれそうですか? それとも売却ができそうですか? 不動産を相続したものの、とてもじゃないけれど貸せるような物件ではなく、売却もできず、仕方がなく税金だけ払うという「空き家」が今増えています。いわゆる「負動産」と呼ばれるものです。その家を相続した人は、処分に大変な思いをするかもしれません。その辺りを、考えたことがありますか? 自身が70代、80代になると、そんなことを考える余裕はなくなります。今日生きることで精一杯になるかもしれません。だからこそ50代の段階で、一度考えて欲しいのです。50代なら、知力、気力、体力ともに、総合的に検討できる年代です。 自身の人生の後半戦を、どう生き抜いていくのか。 その年齢から年収を極端にアップできるのは、カーネル・サンダースさんくらいです(笑)。でももし可能な限り経済活動をしたいと思うなら、50代で何か勉強するとか、資格を取得するとか、副業を考えてみるとか、趣味を極めるとか、いろいろあるかと思います。 それと住まいをどう考えるか。 何度も言いますが、人は必ず死にます。 ピンピンコロリは、宝くじに当たるような確率です。その前に、判断能力や体力が低下していきます。そうなる前に、クリアな頭で人生の後半の作戦会議をしましょう。その中でいちばん重要なのが「住まい」です。何てったって「住まい」は生きるための拠点ですから。生活の基盤ですから! 目先ではなく、自身が80代になった時にどうなのかの視点を持って検討してください。 【まとめ】住まいは生きる拠点。目先ではなく80代になった時を想定してみる! ☆ ☆ ☆ 『あなたが独りで倒れて困ること30』(ポプラ社)1320円 著者・大田垣章子 文/太田垣章子( おおたがき・あやこ) 司法書士・賃貸不動産経営管理士。 登記以外に家主側の訴訟代理人として、延べ3000件弱の家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託してきた賃貸トラブル解決のパイオニア的存在。決して力で解決しようとせず滞納者の人生の仕切り直しをサポートするなど、多くの家主の信頼を得るだけでなく滞納者からも慕われる異色の司法書士でもある。著書に『2000人の大家さんを救った司法書士が教える 賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド』(日本実業出版社)、『家賃滞納という貧困』『老後に住める家がない!』『不動産大事変』(すべてポプラ新書)がある。
@DIME編集部