「成果ゼロ?」の日中首脳会談を「有意義だった」と自賛する岸田首相、拘束邦人や水産物禁輸問題はどうなる
だが岸田首相は、会談後に記者団に対して、こう述べている。 「『戦略的互恵関係』の包括的な推進と、『建設的かつ安定的な関係』の構築という大局的な方向性を確認した上で、諸懸案についても議論ができ、有意義な会談となったと受け止めています」 何が有意義だったのだろうか? 「有意義だったが発表できないこと」があるとしたら、それはなぜなのか? ■ 唯一、進展が見込めそうなのは… 一方、中国側の発表を見ると、新華社通信は、次のような李強首相の発言を報じている。李首相の発言部分を全訳する。 「昨年11月、習近平主席は岸田首相とサンフランシスコで会談し、重要なコンセンサスに達した。両国の戦略的互恵関係を全面的に推進することを改めて確認し、双方の関係発展に重要な政治的指導を提供したのだ。 日本が中国とともに、さらに多くの点で前を向いて進み、両国のリーダーが達成した重要なコンセンサスをうまく実行していくことを望む。互いの信頼を不断に固め、協力を深化させ、意見の相違をうまく処理し、新時代の要求に合致した建設的、安定的な中日関係構築へ向けて努力していくことを望む。 歴史問題と台湾問題は、中日関係の政治的基礎をなす重大な原則問題であり、基本的な信義の問題でもある。台湾問題は中国の核心利益の中の核心であり、(越えてはならない)レッドラインでもある。日本側が重く受けとめて遵守し、両国関係が積極的な雰囲気を作り不断に発展していくことを望む。
中日の発展は、互いにとって重要な機遇である。中日経済は、すでに『あなたの中に私があり、私の中にあなたがある』という局面にある。両国の国民に、実に実際的な福祉をもたらすのだ。中日の経済は、互いの長所を補填し合うということが長期にわたって存在する。そして科学技術のイノベーション、デジタル経済、グリーン発展、第三国市場などの方面で、さらに巨大な協力の潜在力がある。 双方が相互の成就を担い、インダストリアルチェーンとサプライチェーンの安定した流通と全世界の自由貿易システムを、共同で維持、保護していくべきだ。中国は日本と、引き続き多くの分野、多くのルート、多くのレベルでの友好交流を展開していくつもりだ。さらに人員の往来を利便化し、青少年の交流を積極的に展開し、中日友好協力の民意の基礎を、不断に実行していく。 日本の福島の核汚染水の海洋放出問題は、全人類の健康と、全世界の海洋環境、国際的な公共の利益に関することだ。中国は主要な利益相関者であり、中国政府と国民はこのことに対してとても懸念している。日本は長期の国際的な監視測定の設定などの問題で、さらに一歩誠意と建設的な態度を持って、国内外の正当で合理的な懸念に真摯に向き合い、自身の責任と義務を着実に履行することを望む」 以上である。この内容を深読みすると、(1)はまったくの平行線。(2)と(3)は無視。(4)は近く進展の可能性ありというところだろうか。 ■ 低支持率の他国トップには冷たくなる中国 今週は、中国共産党の劉建超中央対外連絡部長の来日を予定している。それが、(4)を決断するきっかけになればよいが、逆になる可能性もある。 一般に、日本よりもプラグマチックな外交を展開する中国は、日本の政権の支持率が2割を切ると、急に冷淡になる。「どうせ半年以内に首相が代わるだろうから、大事なことは次期政権と決めればよい」となるのだ。 中国は岸田政権をどう見定めるのか? (4)すらも進展しないとなれば、「岸田総裁は9月に再選なし」と判断したということだろう。
近藤 大介