「成果ゼロ?」の日中首脳会談を「有意義だった」と自賛する岸田首相、拘束邦人や水産物禁輸問題はどうなる
■ 岸田首相自慢の外交手腕、中国・李強首相を相手に通用したか ソウルで行われた日中韓首脳会議に合わせ、5月26日夕刻に約1時間開かれた岸田文雄首相と李強首相との日中首脳会談は、またもや「ゼロ回答」に終わった。もしくは「発表できない進展」があったのかもしれないが、日中首脳会談後の華々しい発表とはならなかった。 【写真】中国生まれでオーストラリア国籍を持つジャーナリストのチェン・レイ氏(右)は、中国国営放送のニュースキャスターを務めていたが、国家機密を外国に提供した容疑で3年間も拘束された。昨年10月にようやく解放され、オーストラリアへの帰国を果たした 日本と中国の間には、いわゆる日本側が言う「4大懸念事項」が存在する。 (1)日本産水産物輸入禁止……昨年8月24日に、日本が福島第一原発のALPS処理水を太平洋に放出し始めたことに対し、中国が「核汚染水を海洋に放出した」として猛反発。以後、日本産水産物及び加工品をすべて輸入禁止としている。 (2)複数の日本人のスパイ容疑での拘束……昨年3月にアステラス製薬幹部を北京で「反スパイ法違反」などで拘束したのを始め、少なくとも5人の邦人が中国国内で「スパイ容疑」により拘束・逮捕されている。 (3)尖閣諸島のEEZ(排他的経済水域)内でのブイ設置……昨年7月、中国が尖閣諸島のEEZ内にブイを設置。衛星と連動させた軍事目的の海洋計測などを行っているものと見られる。 (4)日本人短期渡航のビザ措置……コロナ禍が明け、中国はすでに多くの国に対して、短期のビザなし渡航を認めているにもかかわらず、日本に対しては中国へ渡航するすべての日本人に対して、ビザを義務づけている。
■ 「求めた」「求めた」「求めた」「要請した」が… 日本外務省の発表によれば、今回、岸田首相は李首相に対し、「4大懸念事項」について、それぞれ次のように求めた。 「ALPS処理水の海洋放出について、両首脳は、昨年11月の日中首脳会談以降、専門家を含む両国間の事務レベルの意思疎通が進展していることを評価した。その上で、岸田総理大臣から、IAEAの下で関心国の参画を得て行われているモニタリングが中国を含む関心国の理解を促進することを期待している旨述べた。両首脳は、問題の解決に向けて、これまでの意思疎通の進展を踏まえ、事務レベルで協議のプロセスを加速していくことで一致した。また、岸田総理大臣から、中国側による日本産食品の輸入規制の即時撤廃を改めて求めた」 「中国における邦人拘束事案について、岸田総理大臣から、我が方の立場に基づき改めて申し入れ、拘束されている邦人の早期解放を求めた」 「日本のEEZに設置されたブイの即時撤去を求めた」 「岸田総理大臣から、中国短期滞在査証免除措置の早期再開を改めて要請した」 このように、「求めた」「求めた」「求めた」「要請した」のだが、日本側が納得のいく回答が得られなかった、もしくは幾ばくかの進展はあったが発表には至らなかったというわけだ。これは、昨年11月にサンフランシスコAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の際に行われた岸田首相と習近平国家主席の日中首脳会談の時と同様である。すなわち、結果としてこの半年間で、進展を見せていないのだ。