「B級スポット」に込められた非戦への祈り 関ケ原ウォーランド
「想像以上にシュール」「謎のパラダイス」「文句なしのB級スポット」――。そんな口コミであふれるテーマパークが岐阜県関ケ原町にある。関ケ原の合戦(1600年)を再現した場所で、「ぜひ行くべし」という書き込みも。これは行くしかない。 最寄り駅からしばらく歩くと、「関ケ原ウォーランド」が見えてきた。城郭さながらの門をくぐると、コンクリート製で等身大より少し大きい騎馬武者像が目に飛び込んできた。その先では、数多くの武将や足軽兵、鉄砲隊などがまさに合戦を繰り広げている。 約1万坪の園内には、首実検をする東軍の徳川家康や、気勢を上げる西軍の石田三成、馬に乗って主戦場に駆け出す福島正則など200体超の像が並ぶ。 奇抜な色遣いで、それぞれの表情も味わい深い。少しいびつな作りに思わず笑いが込み上げる。そんな完璧すぎない感じが、来園者を引き付ける魅力なのかもしれない。 像を作ったのは同県出身の造形作家、浅野祥雲さん(故人)。知る人ぞ知るコンクリート像作者で、その独特な作風の像は県内各地に建ち、「東海珍スポットの父」などと呼ばれファンも多い。開園から60年が過ぎて劣化が目立つが、ファンたちが1~2年おきに色を塗り直すなどして維持されているそうだ。 一体、誰が何のために作ったのだろうか。建設の経緯を、ウォーランドを運営する「関ケ原観光グループ」営業部長の谷口太泉(だいせん)さん(36)が教えてくれた。 手掛けたのは谷口さんの祖父で、初代館長の玉泉(ぎょくせん)さん。きっかけは父の遺言だった。「この地で3万6000人が亡くなった。その教訓を伝えるものを残してほしい」 玉泉さんは特攻隊に配属されながら出撃することなく終戦を迎えた。父の遺言と自らの戦争体験に突き動かされ、合戦の戦死者を供養する「宝蔵寺」を建立。そしてそのすぐそばにウォーランドを建設したという。 「ノーモア関ケ原」という玉泉さんの非戦への祈りを知った後に園内を回ると、感じ方が少し変わった。一つ一つの像が、戦乱のない世界を訴えているようにも思えてくる。 園内に一つだけ、合戦と無関係の像がある。「武田信玄の亡霊」と名付けられた像の横の立て札には、こんな言葉が。「もう争いはやめい!」 きっと、玉泉さんの心の叫びだったのだろう。そしてこの言葉は、今の世界にも向けられているように思える。ウォーランドは実は、ユーモアを交えながら戦争の愚かさを伝える奥深いテーマパークだった。 では、「おもしろスポット」などとして取り上げられることに不満はないのだろうか。「きっかけは何であれ、来ていただいて背景を知ってもらえたらありがたいです」とほほえむ谷口さん。懐の深さも見せつけられた。【梶原遊】 ◇アクセス 関ケ原ウォーランド 岐阜県関ケ原町関ケ原1701の6。JR関ケ原駅から徒歩25分。駐車場あり。4~11月は午前10時~午後4時、12~3月は午前10時~午後3時(土日祝は午後4時まで)。閉園時間の30分前までに入園。入園料は大人800円、小学生以下500円、幼児300円。3歳以下は無料。ペット入園不可。Sekigahara花伊吹(0584・43・1177)。