西野監督の続投か、クリンスマン氏か、日本の次期監督を巡る賛否
ベルギー戦の敗因のひとつに後半途中から相手に加わった「高さ」に対処できなかった点がある。というよりも、対処のしようがなかったと言っていい。限られた時間のなかで試行錯誤を繰り返した末に主軸を固めることができたが、残念ながらオプションを作ることはできなかった。 ならば、西野監督に長期的なスパンを与えれば、戦い方に幅をもたせたチームを作り上げることができるのか。待ったなしの状況にある世代交代を進められるか否かを含めて、JFAの技術委員会にはドライかつ迅速な作業のもと、西野監督が続投した場合の可能性を検証しなければならない。 ただ、いくらスピーディーさが必要だと言っても、ベルギー戦の翌日にクリンスマン氏の名前が報じられたことも違和感を禁じ得ない。ハビエル・アギーレ元監督とハリルホジッチ前監督の解任を含めた、前回ブラジル大会後の4年間を総括する時間があったとはどうしても考えられない。 総括があって初めて、次期監督候補を議論できる。ドイツ代表のエースストライカーとして、ワールドカップで通算11ゴールをあげているクリンスマン氏の現役時代のネームバリューは高い。しかし、監督としてはどうなのか。ロシア大会で形をなした、技術の高さと俊敏性、勤勉性に組織力を融合させた独自のスタイルを、発展・継承させていくビジョンと指導力をもち合わせているのか。 クリンスマン氏は監督としてドイツ代表を自国開催の2006年大会で3位、アメリカ代表を前回ブラジル大会でベスト16へと導いている。同時に両チームで若手を積極的に抜擢するチーム改革も断行していて、世代交代が急務な日本にマッチするマインドをもち合わせているかもしれない。 しかし、北中米カリブ海最終予選でアメリカが連敗スタートを喫した、2016年11月に電撃解任された。最終的にアメリカは8大会連続のワールドカップとなるロシア大会出場を逃した。クリンスマン氏は、ドイツ代表監督時代から「どの監督にも好みの選手とそうでない選手がいる」と公言してはばからなかったが、その方針が悪い方向に出たのかもしれない。メキシコで本田が所属していた「パチューカ」からのオファー報道もあったが、現在はフリーの状態が続いていた。 2010年の南アフリカ大会を率いた岡田武史氏の後に、イタリア人のアルベルト・ザッケローニ氏、メキシコ人のアギーレ氏、旧ユーゴスラビアのハリルホジッチ氏と、いわゆるラテン系の指揮官を招聘してきた8年間の軌跡とも整合性は見られない。 しかも件のスポーツ紙は、JFAが提示した年俸200万ユーロ(約2億6000万円)のオファーに、クリンスマン氏も前向きな姿勢を見せているとも報じている。西野体制下で上向きに転じた流れを、さらに加速させるための議論を十分に展開する時間があったのだろうか。 不可解さを大いに残したなかで、西野ジャパンは5日の午前中に帰国して解散する。次期監督問題を議論する意味でも注目を集めるJFAの技術委員会は、20日に都内で開催される予定だ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)