2024年の「中堅企業」は9,229社 企業支援の枠組み新設で、成長を促進し未来志向へ
規模別 従業員1人当たりの当期利益
◇中堅企業は603万円で、2年で322万円の上昇 中堅企業の2023年の当期利益は20兆5,240億円(前年比31.8%増)だった。大企業は34兆4,823億円(同23.6%増)、中小企業は14兆5,187億円(同11.5%増)で、利益では中堅企業が中小企業を上回った。 2021年の当期純利益との比較では、中堅企業が113.3%増と2倍以上に伸び、大企業(83.6%増)と中小企業(33.6%増)の伸びを大きく上回った。 2023年の従業員1人当たりの当期利益は、中堅企業が603万円(前年453万円)で、大企業の739万円(同612万円)を136万円下回った。中小企業は146万円(同132万円)で、中堅企業や大企業との格差が大きい。 中堅企業と大企業が過去2期で従業員1人当たりの当期利益を300万円以上伸ばしたのに対し、中小企業は36万円の伸びにとどまった。
規模別 当期利益率 中堅企業の利益率は7.3%
2023年の中堅企業の当期利益率は7.3%で、前年(6.0%)から1.3ポイント上昇した。 大企業は8.4%(前年7.7%)で、中堅企業との格差は1.1ポイントに縮小した。 一方、中小企業は3.4%にとどまり、大企業や中堅企業との格差は拡大している。
規模・産業別 当期利益率 中堅企業は運輸業とサービス業他の利益率が高い
産業別の当期利益率をみると、中堅企業では、サービス業他が20.1%で最高。大企業と中小企業では、サービス業他の当期利益率が5%台にとどまり、中堅企業の高さが目立つ。このほか、運輸業が18.6%、農・林・漁・鉱業が13.1%と続き、中堅企業では3産業で当期利益率が10%を超えた。 大企業で当期利益率が最も高い産業は、卸売業で11.6%だった。中堅企業と中小企業では当期利益率が3%未満にとどまり、スケールメリットを生かす総合商社などが市場をけん引していることを表す。このほか、情報通信業10.6%、不動産業10.1%で当期利益率が10%を上回った。 中小企業で当期利益率が最も高い産業は、金融・保険業の16.5%で、唯一10%を超えた。貸金業などで利益率が高く、大企業・中堅企業を上回った。 ◇ ◇ ◇ 最新期における規模別の従業員1人当たりの売上高は、大企業8,702万円、中堅企業8,253万円、中小企業4,267万円。また、従業員1人当たりの当期利益は大企業739万円、中堅企業603万円、中小企業146万円だった。 昨今重視される生産性では、中堅企業は大企業にあと一歩及ばないが、僅差で追随している。このため、大企業と比べて事業規模に成長余地を残している中堅企業に、賃上げや国内投資を後押しすることで、国内経済や地域経済に好循環をもたらすことが期待されている。 これまで中小企業向けの支援は手厚く、弱い立場の中小企業が守られてきた。一方、中小企業向けの優遇を受けるため、安易な減資や従業員数の制限で企業規模の拡大を抑える企業もみられた。こうした企業の成長を抑制する動きによって、日本の中小企業の生産性、収益性を低迷させていた側面がある。 今回の新たな枠組みの設定で、国は成長意欲の高い企業への支援に力を入れる。弱者救済のための支援から、設備投資や人的投資、研究開発など、成長を目的とした「企業活動」への支援に軸足を移すことで日本企業の成長を促進する。こうした支援で中小企業に明確な目標像を与えると同時に、中堅企業への規模拡大のモチベーションにつながることが期待される。また、生産性は賃金に直結するため、労働者が生産性の低い企業から生産性が高く待遇の良い企業に流れる動きが加速すると考えられる。設備投資・人的投資を怠り、成長意欲が低い中小企業の淘汰が始まるだろう。 一方で、現状は足踏み状態にあるが、意欲があり成長の芽がある中小企業にはチャンスを与えるべきだ。また、大企業から中堅企業への規模縮小など、大企業や中堅企業になった後の成長の停滞を防ぐ必要はある。中小企業から中堅企業、中堅企業から大企業への成長の道筋に具体性を与え、国内企業全体を未来志向に導くことができるかが重要となってくる。