セブン-イレブン創業から半世紀 今後を模索する新コンセプト店、鈴木敏文氏のコンビニ像と比較
セブン-イレブンが創業からちょうど半世紀となる2024年、未来へと向かう新しいコンビニの姿「SIPストア」を千葉県松戸市で示しました。コンビニという業態は、1974年5月15日オープンの1号店(豊洲店、東京・江東区)以来、日本一の店舗数と売上高を誇るチェーンへと成長しましたが、近年は停滞感が否めません。システム化された小売業の最先端を走るコンビニは今後どう変わっていくのか。セブン-イレブンの実質創業者である鈴木敏文氏が半世紀前に語ったコンビニの「あるべき姿」と比較しながら考えていきます。
SIPストアとは 即食需要だけでない商品展開
2023年のコンビニ業態全体の売上高は11兆6593億円(2023年1~12月の売上累計、日本フランチャイズチェーン協会調べ)と全店ベースで前年を上回っています。年間来店客数も全店ベースで3.0%増、既存店ベースで2.9%と、コロナ禍や値上げの影響があるにせよ、やや明るい兆しを見せています。 一方、コンビニ業態全体の店舗数を見ていくと、2019年12月末から2023年末までの4年間でわずか93店舗しか増えていません。 セブン-イレブンに限れば、2020年2月末から2024年までの4年間で580店舗を増加させるものの、2010年代の前半から中頃にかけて年間1000店舗以上を増加させた勢いと比較すると、国内において低成長期に入ったように見えます。 そうした状況にあって、セブン-イレブンは業態そのものを変えていく、新たな店舗コンセプトを実証実験が始まりました。その店舗が2024年2月29日、千葉県松戸市に開設した「SIPストア(セブン‐イレブン松戸常盤平駅前店)」です。既存のセブン-イレブンをリニューアルした新コンセプト店舗として注目を集めています。 「明日の朝食用として、焼くだけでおいしく食べられる魚や、明後日の昼食に利用する冷凍食品、これらを今日の即食用のファストフードと同時に買える場を、お客様に提供しています。どんな反応を得られるのか検証したいと考えています」(セブン-イレブン・ジャパン執行役員 企画本部ラボストア企画部 山口圭介氏) 現在の即食需要だけでなく、明日、明後日に利用する商品を展開、店舗の利用動機を広げて、スーパーマーケットやドラッグストアなど異業態の競合とも十分に戦える新コンセプトを展開していくとしています。 売場面積は88坪で、通常のセブン-イレブン(約45坪)の1.8倍、SKU(単品)数は5300で、通常(3300) の1.6倍、店舗運営に要する人時数は通常の約1.5倍と、既存店を拡充した店舗としています。 店舗名は、22年8月、セブン‐イレブン・ジャパン(SEJ)と同じグループのイトーヨーカ堂(IY)が締結した「セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)・イトーヨーカ堂(IY)・パートナーシップ(通称SIP)」に由来します。 目的は商品やサービスにおける相互供給、アプリを通じた相互送客などの販売促進などをテーマにシナジーの最大化を図ること。その延長線上に今回の「コンビニとスーパーの強みを融合させた新型店舗(SIPストア)」があります。 「次世代セブン-イレブンの模索が主旨。(既存店)平均日販は70万円ありますが、まだ取り込めていないニーズがある以上、まだまだ伸長させる余地があります。あらゆる事業会社のリソースを活用したときに、どのくらい変わるのだろうか。それを知るための手段としてSIPストアがあるのです」(山口氏)