洋楽器とのコラボで人気の「お囃子プロジェクト」が節目のライブ
お祭りなどで耳にする鉦(かね)や太鼓の「お囃子」のうち、歌舞伎や日本舞踊の舞台で演奏されるのが「邦楽囃子」だ。その囃子方・望月秀幸と望月左太寿郎が“敷居が高いと思われがちな伝統芸能のイメ―ジを壊そう”と始めたライブユニット、「お囃子プロジェクト」が20回目の節目を迎える。今回も和楽器と洋楽器のプレイヤーをゲストに迎え、古典の曲はもちろん民謡、昭和歌謡、ポップス、クラシックにプロレス曲まで、盛りだくさんの内容で贈る。演奏の合間のトークも楽しいと人気のライブについて、秀幸と左太寿郎に聞いた。 【全ての写真】望月秀幸と望月左太寿郎のライブユニット「お囃子プロジェクト」 お囃子のベースは締太鼓、大鼓、小鼓、笛で、まとめて「四拍子(しびょうし)」と呼ばれる。今回はゲストとして福原友裕(邦楽囃子・笛)、住田福十郎(邦楽囃子)、芳村伊十冶郎(長唄三味線)を迎え、さらに「お囃子プロジェクト」常連のジャイアン谷口(パーカッション)のほか鈴木広志(サクソフォン)、木村仁哉(スーザフォン)、河原崎豊(キーボード)と、総勢9名の編成。これもバンド経験のある秀幸のこだわりだ。 「邦楽器の『四拍子』に加えて、洋楽器は旋律を吹いてくれるサクソフォンと、コードの音を出してくれるキーボード、それからベースになる音のスーザフォンと、この3人がどうしても必要だと思いました。そこに毎回、邦楽と洋楽とを結び合わせる架け橋になってくれる谷口さんのパーカッションということで、この編成になりました」という秀幸。通常はギターが入るところに今回はキーボードが入るとのことで、左太寿郎も「管楽器とキーボードという珍しい組み合わせに僕たちの邦楽器が合わさって、どういう化学反応が起こるのか楽しみです」と話す。 気になる曲目は、美空ひばりの「お祭りマンボ」「リンゴ追分」のほか、ベートーヴェンの「運命」、さらに西城秀樹などの昭和歌謡やロック・ポップスまでと幅広いラインナップ。セットリストは当日のお楽しみだが、オリジナル曲で演奏希望の多い「ラテン新曲」や「三味線と笛のためのバラード」も予定している。 「美空ひばりさんや西城秀樹さんの曲って邦楽囃子と合うんだよね」と左太寿郎が言うと、秀幸も「他にも、民謡の『炭坑節』をバラード調にアレンジしてみたら、しっとりとおしゃれな感じに仕上がったりね。ここでしか聴けないアレンジばかりなので、どれもぜひ聴いてほしいです」と話す。 歌舞伎の舞台ではさまざまな楽器を使って、たとえば「湖のほとりで聞こえるような柔らかい波音を入れる」(左太寿郎)など、“効果音”の演奏も担当する囃子方。「お囃子プロジェクト」のライブでも、彼らしか出せないその“音”が楽曲をドラマティックに盛り上げる。 「ふたりだけのコーナーとしては、秀幸のお囃子で僕が踊る(日本舞踊・立花流三代目立花寿美造としても活動)のが好評だったので、今回もやろうと思っています。これは歌舞伎など“踊り”と“邦楽囃子”の関係性が分かる貴重な機会だと思うので、こちらもお楽しみに」と左太寿郎。耳だけでなく目でも楽しめるライブとなりそうだ。 東京藝術大学を卒業した20代後半、2010年に邦楽界の未来を押し広げようと「お囃子プロジェクト」をスタートしたふたり。邦楽と洋楽のコラボが今ほどなかった頃だ。 「当時はなんとなく始めたというか、“邦楽界”というと一般のお客様には馴染みがないので、自分たちでも何か発信しないとね、くらいの気持ちでした。でも時代も変わってきて、今は邦楽界のために、もちろん自分たちのためにも続けなきゃいけないと強く思うようになって。だから今のほうがアツいかもしれないですね(笑)」と秀幸は語る。左太寿郎もうなずきながら、「ライブを通して他のジャンルとの輪も少しずつ広がってきているので、さらにこの輪が大きく広がっていければいいなと思っています」と話す。 今回のゲストで囃子方の若手・住田福十郎は、「片山福十郎」という名前でTVアニメ『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』にも出演している声優でもある。「お囃子プロジェクト」自体も公式YouTubeを立ち上げており、「邦楽をよく知らないという方にも気軽に来てもらって、邦楽を知る入り口のような場になれば」(秀幸)という。 そんな20回目のライブだが、「節目ではありますけど、いつも通りフラットな感じで」と笑う秀幸。「20回目にしてこのフラットさ」と左太寿郎も笑いつつ、「これからも本当に少しずつですけど、一つひとつやりたいことを形にしていきたいですね」と語る。最後に秀幸が「これからも30回、40回……と続けていくことが、僕たちの一番の目標です」と締めくくってくれた。 取材・文:藤野さくら <公演情報> お囃子エンターテイメント お囃子プロジェクトVol.20 公演日程:2024年9月23日(月・祝) 会場:文京シビックホール小ホール