習近平氏、トランプ氏再登板見据え「反保護主義」アピール G20関連で精力的に個別会談
【北京=三塚聖平】中国の習近平国家主席は、南米で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)と20カ国・地域(G20)の首脳会議への出席を通じて「多国間主義」や「反保護主義」の重要性を訴えた。「米国第一主義」を掲げて関税引き上げを主張するトランプ次期米大統領の就任を前に、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国などからの支持拡大に努めた。 ■賛同は広がりやすい状況 「多国間主義を堅持しなければならない」「単独主義、保護主義に反対すべきだ」。習氏は18日、ブラジル・リオデジャネイロで開かれたG20首脳会議での演説でこう強調した。名指しを避けたものの、トランプ氏を念頭に置いた発言とみられる。 「タリフマン(関税男)」を自称するトランプ氏は大統領選で、中国製品に60%、その他の国の製品に10~20%の関税を課すと公言している。G20首脳会議に出席した各国首脳は米国の経済的圧力に身構えているとみられ、習氏の主張への賛同は広がりやすい状況にある。 習氏が特に意識したのは新興・途上国だ。習氏は演説で「中国は一貫してグローバルサウスの一員だ」と発言。「発展途上国の信頼できる長期協力パートナーであり、グローバル発展事業を支援する行動派、実務家だ」と強調した。習氏は中国の巨大経済圏構想「一帯一路」をアピールするとともに、アフリカの発展支援、貧困削減、食料安全保障の国際協力に尽力する考えも示した。 ■投資呼び込みたい事情も 習氏は各国と個別会談も重ねて関係強化を図った。20日にはブラジルのルラ大統領と首都ブラジリアで会談。両国関係を「公正な世界と持続可能な地球を構築する運命共同体」に格上げすることで合意した。中国外務省によると、ルラ氏は「両国は互いに尊重し、頼る良き友人だ」と述べるとともに「ブラジルは『新冷戦』に反対する」と発言した。中国側が米国を念頭に、繰り返してきた主張に呼応した形だ。 19日には中国と距離を置く姿勢を見せていたアルゼンチンのミレイ大統領と初会談し、金融やエネルギー分野などで協力を進めることで一致し接近を進めた。
一方、18、19両日にはドイツのショルツ首相、フランスのマクロン大統領、英国のスターマー首相、オーストラリアのアルバニージー首相ともそれぞれ会談。トランプ氏の再登板で欧州各国や同盟国との関係が緊張することが見込まれる中、欧州各国の取り込みを進める狙いがあるとみられる。トランプ政権発足後の「第2次貿易戦争」で中国経済がさらなる逆風に見舞われることは必至で、欧州などから投資を呼び込みたい台所事情もうかがえる。